第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
その屋敷の奥の一角で
私と大男は終わりのない押し問答。
だっていきなり脱げと言うのだ。
着物に着替えるためだとわかっている。
私の事を男だと思っているから
簡単にそんな事を言うとわかってはいても
こちらには抵抗しかない。
「なら1人で着られんのかよ?」
「き…きられ…る、かな…」
正直自信はない。
もう何年も着ていない。
帯の結び方…
そこが1番の難関だ。
「ほら見ろ。別に取って食いやしねぇよ」
「当たり前です‼︎誰かおられないのですか⁉︎
どなたか女性にお願いしたり…!」
「なんで女なんだよ」
「女物の着物だからですよ!」
「俺が出来んのに
何でわざわざ他所に頼む事がある」
「柱の仕事じゃありませんよね!」
「任務のためだ。しかも俺が言い渡した。
その準備なら、俺の仕事でもある」
「なんでだ!
こんな時ばっかり真面目か!」
「何だとてめぇ…」
「うぅごめんなさい。でも…!」
「そういえばお前は、
他の隊士たちと湯浴みもしねぇらしいな。
よっぽどなんかあんのか」
何でそんな事を知っとるんだ。
関係ないでしょー…?
「別に…みんなみたいに立派なカラダしてないし
揶揄われるのもつまらないので…
ただそれだけです」
口から出まかせ…
苦し紛れのウソに音柱サマは頷いて下さる。
「そんなとこだろうと思ってたが…
俺だってそこまで人でなしじゃねぇし、
笑ったりしねぇから脱げって言ってんの」
真剣な目でそう言われ
この人の本心なんだろうという事が
真っ直ぐに伝わって来た。
でもそれとこれは話が違う。
「……わかりました。でも、
襦袢を身につけるまでは
こちらを見ないでいていただけませんか?」
「……わかった」
「絶対ですよ?」
「わかったよ」
ため息混じりの言葉が
くるりと背を向ける。
隊服を脱いでしまえば、
胸を押し潰しているサラシが見える。
女ですと、言っているようなものだ。
…そうか。
今日は、腹も締め付ける事になるのか。
胸だけでもつらい。
それに加えて腹…
大丈夫かな私。