第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
「ガタイはいいし…どう見ても男だし」
「…相変わらず失礼ですね」
「お前ならひょっとしたら少女に見えるだろ」
…妙な言い回しだな。
ひよっとしていない。
もう決まっているような言い方じゃないか。
「女性の隊士はたくさんいます」
私はこの人に遠慮するのをやめていた。
ろくな事にならないからだ。
「今回の鬼は、強ぇ」
「……」
「試してみたくねぇか?」
ニッと笑った顔は楽しげで、
嫌がらせで言っているのではないと
すぐにわかった。
…珍しい。
私と見れば、嫌味や嫌がらせの嵐だったのに。
「まぁ、女装に抵抗はあるだろうが、
志の為なら容易いだろ」
「強い鬼なら、音柱サマが行けば一発では?」
「お前、俺が女装できると思う?
ならお前はどうかしてるぞ」
………
「女の前にしか姿を現さねぇらしい。
その証拠に、あの場所で消えるのは
若い女だけだ」
「私は…」
「わかってるよ。
でも殺るならそれしかねぇだろ?
それとも、他に譲るか?」
私が男だという事をわかった上で行かせて
手柄を私にくれようとしている?
強い鬼
と聞いて、私がじっとしていられない事を
きっとわかっていて
こんな話を持ちかけているのだ。
私が強くなりたい事を知っている。
郷へ帰れなんて、言ったくせに。
それがわかって、無下にする私じゃない。
元より、柱の言いつけに
背けるわけもないのだけれど。
「…ありがたく、行かせて頂きます」
私の返事に満足そうに頷いて、
「じゃ、詳細は鴉に聞け」
ヒラヒラと手を振った音柱サマは
「お前はちょっと来い」
私の袖を引いた。
「嫌ですよ‼︎」
「嫌がる権利なんかお前にあると思うか」
「…あり、…ありま…っ
あ、あろうがなかろうが、嫌なものは嫌です!」
「黙れ、聞き飽きた」
そう言って伸びてきた長い腕に
襟元を引き寄せられた…
連れて来られたのは音柱邸。
さすが柱のお屋敷は立派だ。
立派すぎて居心地が悪い。