第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
厳しい環境の中で、
何事も全力で正直に生きている人を見ると
どうしても揺らいでしまう。
羨ましいと思ってしまう。
弱い。
いつまで経っても私は弱い。
私は、偽っている
のではない…
両親の、無念を晴らすのだ。
優しい父に甘え切ったお嬢様。
厳しい母に守られていた箱入り娘。
いつまでもそんなんじゃ
目的は果たせない。
あれは私じゃないんだよ。
もういない。
可哀想な事に
両親と共に天に召されたのだ。
例えばあの時の鬼は
もう灰と化していたとしても、
これ以上私のような思いをする人が
1人でもいなくなるように…
もうすぐ、春が明ける。
そうなれば、
私を乱し散らかしていく夏が来る。
私は、両親を鬼に殺された睦ではない。
鬼殺隊として鬼を斬る弥彦だ。
私は刀の柄を握り直す。
心を鎮めて
余計な事は考えないで
私は、
私の目的はなんだったかを
もう1度凝視め直すんだ
笑われても
これでいい
瞼を開ければ、
そこには鬼に見立てた巻藁。
向こうからやってくる
間合いを詰めて
腰を落として
右下方から
刀を振り上げ
その醜い肉塊に垂直に刃を向けて
スパッ
と切れて
ごろりと落ちゆく体
地面に落ちる前に
もう一閃
今度は
頸に狙いを定めて
くるりと
背後に回り込み
その勢いのまま胴に
もう1度刀を通す
何度斬っても
斬っても斬っても斬っても斬っても
ちっともどうにもならない。
どうにもならないのだ
絆創膏だらけの、
包帯だらけになった心を持て余し
それすら空に返した。
それでも生まれてくるのは
哀しみと
怒りと
口惜しさ
何も変わらない
満たされない
お父さんに抱きしめてもらいたい
お母さん…話を聞いて?
ううん、いいの
会えなくてもいいから
どこかで生きていてほしい
私に
希望を
ください
私なんか
幽霊みたいに
向こうが透けて見えてしまいそうな程
存在がないみたいな
私はひとりだ
独りぼっちだ
それが悲しくて仕方ない
てんで子どもだ
ねぇ私は、
間違っていないかな…?