第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
色男かどうかは訊いてないし知らないけど、
それらが才能であると言われてしまうと…。
「だからお前がどれだけがんばった所で
俺様には手が届くはずもないんだよ。
コネコちゃんみてぇに、
鬼とにゃあにゃあ遊んでるだけじゃなぁ」
ムカっ。
「私は大きくなりたいだけで
音柱様になりたいわけではありませんし
手を届かそうともしておりません」
「おい櫻井…っ」
1人の隊士が、さすがに声を上げる。
確かに失礼かもしれないけれど、
黙っていられるこの2人の方がおかしいのだ。
音柱様は横目で私を見遣ると、
「お前は丁だな。随分と長い間、
その階級で燻ってるようだが…
隊士として貢献できねぇのなら
とっとと郷へ帰んな」
そう吐き捨てながら立ち上がり、
「俺は次へ向かう」
そのまま背を向けてしまう。
「…仔猫には、何も出来ませんでしょうか」
湧いてきた疑問が口をつく。
「仔猫も小鳥を捕らえます。
できる事は小さくとも前へ進みたいのです」
「俺らが狩るのは餌を啄みに来る小鳥じゃなく
人間の生活を踏み荒らす獰猛な野獣だ。
小鳥と戯れてぇんならヨソでやんな」
背を向けたまま冷たく言い放つその人こそ
私には鬼みたいに見えた。
確かに私は、
これ以上強くはなれないかもしれない。
自分でもわかっていた。
ずっと感じていた。
郷へ帰んな
その方がいいのかもしれない。
でも帰る場所なんかないよ。
何のためにここに…鬼殺隊にいるのかって
ちゃんと
思い出せ
そのおかげで、
私は俄然やる気が出てしまった。
『なんだお前。まだ居んのか』
どこかで顔を合わせる度に
強くて大きくて男前な音柱にそう言われる。
もうこの台詞にも慣れた。
挨拶代わりみたいなものになっている。
『お邪魔しております』
そうやって
イヤミを込めてそう頭を下げると
わははと豪快に笑って行ってしまうのだ。