第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
長く伸ばした髪は、
あの時から切っていない。
高い位置でひとまとめにした髪が揺れる度に
私は母の笑顔を思い出す。
アレはもう、
あの時に助けにきてくれた隊士に
斬られてしまっただろう。
だけど鬼というものはまだたくさんいる。
私と同じ思いをする人がいなくなるように…
それだけを思って、
私は…ごはんを食べる!
私がその人と初めて言葉を交わしたのは
ある任務の時だった。
私の階級は丁。
そこまで上り詰めたはいいが、
そこで頭打ちだ。
それ以上も以下もない。
自分で決めてしまうのも癪だけれど
限界、というやつなのかもしれなかった。
別に柱を目指しているわけではない。
だけどこんな事を生業にしていれば
もっと強くなりたいというのは、
誰しもが思うこと…
少し大きな任務には
数人の隊士が向かう。
簡単な任務ほど、
階級は低いし人数も少ない。
柱の手伝いをする事もあるし、
隊士だけで手に負えないとわかれば
柱が駆けつけてくれる事もある。
ありがたいながらも、
柱を恐れる隊士らは恐縮して
いつもの力が出せなくなる事もしばしば…
そうして、
「何をやってんだ!」
叱られるのだ。
腕組みをして仁王立ちをしている音柱様の前に
並んで正座。
私の向こうに2人。
共に男の子。
階級は知らない…
けど、
…あれー?
なんで私まで…?
私はちゃんといつも通りに出来ていたはず…
もしかして
連帯責任てヤツ?
厳しいこと……
「あれくらいの鬼倒せなくてどうする!」
左耳から右耳まで突き抜けそうな大声。
皮膚までもがびりびりする。
柱ともなると
声まで鍛えられるのだろうか。
羨ましい限りだ。
そして、
私が正座をして見上げているからだろうか。
ものすごく背の高い人だ……
身体を大きくしたい私としては
本当に羨ましい。
「あの程度、俺が来るまでもねぇだろ!
まったくだらしねぇったら…
普段どんな鍛錬してんだか」
…やけに怒っていらっしゃる。
お腹でもすいているのだろうか。
「………」
!
今まで説教たれていた音柱様が
無言で私に目を向けた。
…というより、
睨んでいる…