第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
私は短身痩躯。
鍛錬してもなかなか身体は出来上がらず
しかも力も弱い。
蟲柱様のように毒でも操れればいいけれど
悔しいことにそんな頭もない。
だから、
無理やり食べる所から真似する事に決めた。
限界は、感じていた。
だけどそれを認めたくなかった。
私はまだ出来るって。
そう思っていたかったんだ。
「はい。私も、恋柱様のようになりたいのです」
「あら、うれしいわぁ!
櫻井くんはがんばり屋さんね、」
花のような笑顔を咲かせて
恋柱様は私を褒めてくれる。
…可愛いなぁ。
「ありがとうございます…」
「一緒にがんばりましょうね!」
拳を握りにっこりと微笑む恋柱様は
私の憧れでもあった。
誰にでも分け隔てなく接してくれる優しさと
敵に立ち向かう強い眼差し。
そしてそばにいると、
とても温かい気持ちになるのだ。
「でも…」
恋柱様はふと真顔に戻り
私の事を見下ろし、
「もう少し筋力がつくといいわね…」
私の肩を握る。
……薄い肩だと思われている事だろう。
だって恋柱様の目が憐れんでいる。
あぁ…私が本当に男であれば、
また違っていたのだろうか。
もっと力がついて
メキメキと頭角を表す、みたいな事に
なっていたのだろうか……
鬼殺隊という組織にいる人たちの
事情は様々だ。
身内や友人を奪われた者、
ただ世の中のためという者もいる。
私は
両親を奪われた。
父の使いで隣町まで行った日の事だった。
帰りが遅くなり、
家にたどり着いた頃には辺りは真っ暗。
帰宅の挨拶をしに父の書斎へ行くと
いつもきれいに整頓された部屋の中は
もうめちゃくちゃ。
ものを書く時に使う父の机は横倒しで
天井まである大きな本棚からは
硬表紙の本が何冊も落ちて散らばっていた。
壁は真っ赤な絵の具を散らしたように染まり
部屋の真ん中には
明らかに異形のものがうずくまっていて
私に気づき
くるぅりと振り返った
その口には人の
肘から下の部分が咥えられていた
それを見た瞬間
全身が竦み上がってしまい
指一本すら自由にはならなくなった。