第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
「…嬉しそー」
ぷっと吹き出して
先生は私の頭に手を伸ばした。
……あ、撫でてくれるんだ。
そう思ったら
胸の奥の方からあったかいものが湧いて来た。
「嬉しい。自分が思った事に
誰かが同意してくれるのって
すごく嬉しいねぇ」
「…そうだな」
割と重い事を言ってしまった私に、
先生は優しく目を細めて
くしゃっと髪を掻き混ぜる。
「明日、一緒に行ったらだめ?」
「朝からか?あー……」
先生は天井に目をやり
少し考えてみせた。
教師は生徒よりも早くに学校へ行く。
一緒に行っても、
生徒に見られる心配はあまりないと思うんだ。
「明日は朝イチ、野暮用があるから。
授業もねぇし、10時前に来てくれると
ちょうどいいんだがな」
小さく首を傾げた先生の視線が
私に戻ってくる。
10時前…
「あ、でもそれじゃダメか。
車で一緒に行きてぇか?」
優しい先生。
私の気持ちにすぐに気づいてくれる。
「ううん、大丈夫。なら私
10時前に着くようにゆっくり歩いてくよ」
そうやって気づいてくれただけでいいの。
すごく、満たされたから。
だから素直に、先生の言う通りにしよう。
「歩いて?チャリで来いよ」
しかめっ面で先生は言うけれど、
「だって、たまには歩きたい。
明日は今日よりもあったかいって。
帰りも、早くに学校出れば大丈夫でしょ?」
「んー…。スマホ手に持って歩くなら許す」
「スマホ?」
「なんかあったら
すぐ俺に連絡できるようにしとくなら
いいって事」
「あぁ。うん、わかった」
「よし。なぁ、このスープ美味いな」
先生は、この話は終わりとばかりに
突然話題を変えた。
「うん。愛情たっぷりだからね」
「…お前今日どうしたの?」
「わかんない」
自分でも随分と恥ずかしい事を言ってると思う。
ちょっとおかしいかもとも思う。
でも、久しぶりに
全開で先生の事が好きだ。
最近は、余計な事ばかりが頭を掠めて
どうしたらいいかわからなくなっていた。
先生が私に話を合わせてくれたからかな。
すごく、気持ちが軽いんだ。