第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
「そんなに大切なの?」
「えぇ…?」
「ソレ」
指をさされて、私はその先を目で追った。
辿り着いたのは自分の胸元で、
私はまた無意識のうちに、
ブラウスの上から指輪をさわっていたのだ。
「えぇと…」
悪い事をしたわけでもないのに
私は慌てて手を離して
「…うん、すごく…」
だけどそれを認めた。
ホントのこと言うのって照れるなぁ。
「あー…、そうなんだ…」
彼の声がさっきまでと違って聞こえて
ふと見上げると
なんだか優しげな目で見下ろされていた。
…ん?
「なに?」
「いやぁ?…そんなふうに
照れたりするんだね。
好きな人にもらったんだなぁと思ったら
櫻井さんも普通に女の子だなぁって」
……
「あのさぁ、前から思ってたけど、
すっごく失礼だよね!」
「えー?」
「そりゃ私フツーじゃないけどさ、
仲良くもないのにそんな言い方よくするよね!」
「え‼︎仲良くないの‼︎」
「えぇ!仲良いの⁉︎」
「だって櫻井さん、
こんなふうに喋らないじゃん。
喋るって事は仲良しでしょ」
「えぇ…」
そう言われたらそんな気もしてきて
…でもそんなつもりはないのに。
いやいや。
「ていうか、例えば仲良かったら
何言ってもいいってわけじゃないでしょ」
そっか
友達って、こんな感じなのかな
思っていたよりも
割と簡単にできるものなんだ…
友達が出来たのが嬉しくて
私はそのまま纐纈くんと長々と話してしまった。
まさかのタイミングでできた友達。
高校生活終了間際にこんな事になるとは。
そして、悪い人じゃなかった。
よくわからない事を言い出すし、
失礼は失礼だったけれど
そのせいか私も言いたい事が言えたから
ヘンに遠慮せずにいられた。
こうやって過ごしていたら、
それはそれで
楽しい毎日だったのかもしれないな…
今日の『ばんご』は煮込みハンバーグ。
先生が、メニューの決定権は
作り手にあると言ったから、
毎日の晩ごはんは
私の食べたいものにしている。
これに野菜スープをつけたら完璧。