第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
「まぁ…いいけどさ。でも、
…卒業すぐに
どうにかしなくたっていいじゃない。
進学にしろ就職にしろ、
みんな4月からなわけだし
まだ猶予はあるんだから」
「…うん。ありがとう」
失礼なやつだけど、
割とまともな事を言うんだな…。
「櫻井さんがそんな顔してちゃ
家の人も心配になっちゃうからね」
家の人……
私が、断りの電話を受けた時、
先生は『やっぱり』みたいな顔をした。
そして、大丈夫だよと
笑って頭を撫でてくれたっけ。
私が落ちる事、わかってたみたいだった。
でも、自分でも何となくわかっていたんだ。
無理矢理決めた所もあったから。
あの仕事をしたかったわけじゃない。
とにかく働かなきゃってそれだけだった。
面接官は、きっとそれを見抜いたんだ。
店員として表に立つってことは、
企業イメージにも繋がるわけだから、
心から楽しめる人じゃなきゃ
きっとダメなんだよね…
漠然とした、働きたいという情熱だけでは
足りなかったという事か。
先生は最初から、それをわかっていたのかな。
それでも止めずに、
私のいいようにしてくれたってことか。
うん、先生
いい勉強になったよ
私はこれから、授業では習わない
いろんな事を学ぶ事になるんだね
なんだろう。
今、無性に先生の顔が見たいや…
家ではあんなに、
先生との接触を避けているというのに
へんなの。
私が小さく笑ってしまった時、
「あ…」
こちらを見下ろしていた纐纈くんが息を呑んだ。
何事かと見上げると、
「ネックレス、この角度だと見える」
彼は自分の首元をトントンと指で叩いてから
私を指さした。
「あ、」
私もまた、自分の襟元を手で押さえる。
先生がくれた指輪。
指につけたら生活指導に取り上げられる。
そんな理由から
追加でもらったチェーンに通して
ネックレスとして身につけていた。
ネックレスならわからないだろうって
先生が言うから。
でももともと『虫除け』のつもりで
指輪をしておくという話だったのに、
こんなふうに隠してたら
まったく意味がないような気がするけど…