第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
そりゃ描き直したくもなるわ。
故に期限の月曜を1日過ぎた、
火曜日の今日、
無事カードを提出し直したというわけだ。
「……うん、ありがと」
話は終わったかと思って、
私はまた、窓の外に目をやった。
校門から続く桜並木が、
少し色づいたように見えるのだ。
あの花が咲く頃に、私はもういないだろう。
満開の桜を、またここから見たかった。
それだけが未練だなぁ…
「櫻井さん、元気ない?」
「は…?」
悪気があったわけじゃないが、
そっけない返事をしてしまった。
だってまだ話しかけられるとは
思っていなかったのだ。
必要最低限の会話しかした事がないから、
もう終わったと思っていたのに。
まさかまだ話しかけてくるとは…。
でも、私を気遣う内容だったから、
無下には出来ないと思った。
「そう見えたから。勘違いかな?」
この人は、純粋に私を心配してくれたのだ。
それは素直に嬉しかった。
「あー…。面接落ちちゃって…」
だから私も、それに真摯に応えようと思った。
「面接って、…バイト?」
「うん、私、進学しないから」
「えッ⁉︎そうなの…?」
咄嗟に大きな声を上げて
周りの目を引きつけてしまった彼は
しまったとばかりに肩を竦め
すぐに声を落とした。
「なんで…?櫻井さん、
成績ダントツだよね…?」
「…成績関係ある?」
「あるでしょ。
何か目標があったんじゃないの?」
申し訳ないことに、
…そんなもの無い。
「もったいなー。それだけいい頭あれば
いい大学入れるのに…」
「…別に、行きたいとこないし、
なりたい物もないし…」
「じゃなんで成績よかったの?」
知るか。
強いて言えば
「暇つぶし」
「うわー!やな感じ!」
「はぁ⁉︎」
やな感じ⁉︎
なんでだよ!
イヤなこと忘れるにはちょうどよかったんだ。
いろいろ、思い出さないように、
どんどん方程式を詰め込んだ。
…そういえば最近、
家で教科書開いてなかったな…。
そうしなくても大丈夫になっていた。
先生の、おかげで…。