第9章 好敵手

「だいたいどうして宇髄さんがいるんですか⁉︎
待っててくれるんじゃなかったんですか？」

「…んな事言ってねぇ。
だいたいただ待ってられねぇわ。
お前ぼけっとしてるし」

「ぼけっと⁉︎してません！」

「隙だらけだから触れられたりすんだよ！」

「あ″———‼︎
うるせェなァ、よそ行ってやれやァ！」

「「……」」

心底迷惑そうな顔をした不死川に
俺たちは口をつぐむ。

「…ごめんなさい」

「…いや、謝らんでも」

素直に謝った睦に、
不死川は困惑したような声を出し…。

「…不死川…お前、睦が可愛いだろ」

何となく、訊いた。
睦に対する態度や言葉が、
ひどく柔らかい。

「あァ…？」

「いや。睦の事、
可愛がってくれてるのが、わかる」

「…あァ、そうかもしれねェな。
こいつは、ウラがねえからなァ」

俺は不死川を、不死川は睦を
睦は俺を見つめていた。

「そうか…。何かの時は、
睦の力になってくれんだな」

「睦が望めば、そうするだろうなァ」

「…よろしく頼む」

軽く頭を下げた途端、睦は
俺の腰に抱きついてきた。……ん？

「…どうした睦？」

肩に手をかけるが
睦は俺の胸に顔を埋めたままだった。

「睦が俺に頼った時
嫉妬で狂うかと思ったが、
その様子なら大丈夫そうだなァ？」

「そんな事になるか。俺は睦が良きゃいい」

「ヘェ…」

「何だ」

いちいち鼻につく。
まぁ、俺にとっても強い味方になるに違いねぇ。
誤解が解けたとは言え、いい気分はしねぇが
睦が気を許してんならそれを尊重する事にしよう。
それで…

「おい睦。話の腰折って悪かった。
まだ、用あんじゃねぇのか？」

俺にくっついたままの睦を
覗き込もうとするも、少しの隙間も無く…

「お前何してんだ…？」

くっつかれるのに抵抗はねぇが
まともに話しができねぇのは困る。

「いいんじゃねェの。
睦は宇髄に甘えていてぇんだよなァ？」

「…はぁ？何だそりゃ」

「わかんねえヤローだなァ。
好いた女に甘えられて不満なのかよ」

「んなわけねぇだろ」