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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第9章 好敵手




俺はわざと、
会話の聞こえないくらい離れた場所にいた。
そこまで落ちぶれちゃいねぇし、
睦の事を疑っているわけじゃねぇ。
盗み聞きなんてみっともないことはしたくねぇ。
——と、思っていたのに。
この俺をあのヤロウおちょくりやがる。

睦の頭を抱き寄せたのだ。
そこまで許した覚えはねぇ。

抵抗もせず、
明らかに安心しきっている睦に

「宇髄にも話せねェ事は俺が聞いてやるよ」

なんて言いやがる。

「…なァ宇髄よォ」

と、話しかけられたのと、
俺が睦の腕を強く引き寄せたのは
ほぼ同時。

あ、このヤロウに一杯食わされた、
と思ったが、時すでに遅し。
悔しい事に、こいつにのせられたのだ。

引き寄せた勢いのまま抱き込まれた睦は
状況が呑み込めず、目を白黒させていた。

「何がなァだ、白々しい!」

「え…宇髄さん…」

睦は俺の腕に手をかけて
見上げてくる。

「お前もお前だ。話してこいとは言ったが
触れられてこいとは言ってねぇぞ!」

簡単に触られやがって。

「不死川何のつもりだ」

「何もくそもあるか。
遠くから見守って下さってるからよ、
どんだけ我慢してられるかと思ってなァ」

にやっと笑う不死川は、からかうように

「おめェ、睦の事になると
嫉妬のカタマリな」

…面白いものを見るような目でこちらを向いた。

「面白がってんじゃねぇよ!
つうかてめぇが睦って呼ぶな!」

「宇髄さん!何言ってるんですか!
もう離して下さいよ」

今までおとなしかった睦が我に返り
俺の中から逃れようともがき出した。

「睦、お前こんな男でいいのか?
嫉妬丸出しでみっともねェな。
ヨユーはねえのかよ」

「何とでも言え。だいたいてめぇのせいだろ」

「不死川さん、それはひどいです。
宇髄さん、私の事すごく考えてくれるし
頼れる所いっぱいなんですよ」

「ホレみろ。あー睦は可愛いなー」

これ見よがしに睦の頭に頬ずりすると

「ちょ…やめて…離して下さいったら!」

慌てて逃げようとする。

「…恋は盲目か」

すでに呆れ返っている不死川は
もう言葉もないらしい。



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