第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
「ずっといたの。もうここでいいやって」
「んー」
ほらほら、睦語は難しい。
その必死な感じは可愛らしい。
俺は笑ってしまいそうになるのを必死に堪えた。
『ここ』ってのは、
お前の荷物置き場と化したあの部屋の事だな?
あそこでカードを書いていたと。
「でも全然寝られないの…さむくて」
「寒い?」
「さむい…あの部屋は。だから
ずっと寝られなくて…先生いたらいいのにって。
……でも来ないし…だから私から行こって」
「んんー……??」
あの部屋は寒いから俺がいたら良かったけど、
来なかったから自分から来た?
って事でいいか?
…でも寒いったって、
「あそこにはホットカーペット置いてあるだろ」
それをつけたら、
寒いのなんか解決するはずなのに。
正論を突きつけた俺に、
睦は大きくかぶりを振った。
「あんなのあったかくない」
そう言ってぎゅうっとしがみついてくる。
「ンなワケねぇだろ、あれは…」
「…先生じゃないとあったかくならない」
………
「……ヘェ」
それはまた…
正論じゃカバーしきれねぇな…
「…で、ここに来たのか」
「うん…」
「眠れたワケだ」
「眠れた…起こされた…」
「…ごめんな」
「ん…も、寝てい…?」
「寝る?」
「ねる…」
もう1度スマホを確認すると
すでに8時を過ぎていた。
「…なぁ睦、
面接行くの、やめにしねぇか?」
「んー…」
「お前、あの仕事ほんとにやりてぇの?」
俺の質問は、睦には届かなかった。
早、穏やかな寝息を立て始めた睦は
俺の手をしっかり支えたまま。
しょうがねぇヤツだなぁ…
「ホントに就きてぇ職なら、
全力で応援するんだけどな…」
俺の負担を考えてるだけなんだったら
そんなの必要ないんだよ。
触れた頬を強めにつまんでみたが、
睦は身じろぎひとつしなかった。