第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
私、先生の事、すきなのに…。
「睦、」
映画館を出て、私たちは肩を並べて歩いた。
「うん…?」
「腹減ったか?何か食う?」
「んー…先生は?」
「俺はどっちでも……っていうかさ、」
ぴゅうと吹いた冷たい風に肩を竦め、
両手をポケットに入れる。
自分のブーツのつま先を眺めながら
隣を歩く先生の気配にくっついて歩いていたら
不意に立ち止まられ、
頼りを失った私もつられて足を止めた。
「こら」
え?と顔を上げる。
でも、目線は先生の首までで止めた…
目を合わせる事が、出来なかった。
「どうした」
「えぇ…?」
突然どうしたと言われても…
「どうもしない」
そう答えるしかない。
私はつま先で地面を蹴った。
「……なら、…ん」
つま先を見ていた視界に
先生の大きな掌が映り込んだ。
この手を取れという事だろう。
「…いいの?」
「いい」
「後1週間、おとなしくしといた方がよくない?」
知り合いに会わないように
わざわざ遠くまで来た事はわかってる。
だから、手を繋いでも大丈夫って、
そういう事だよね?
でも、
「もしかしたらいるかもしれないよ?
どこに誰がいるかわからないじゃん…」
「俺がどうにでもしてやるよ」
「…やだ」
「はぁ?」
先生にばっかり負担がかかるのいやなんだ。
ポケットの奥深くに突っ込んだ手を
ぎゅうっと握りしめた。
ここなら十中八九、
知り合いになんか会わないんだろう。
だけど万が一って事もある。
そしたら、そのいざこざは全て
先生の方に行く事になるのだ。
なんでって、先生がそうするから。
私には、なんのお咎めもなく終わる。
それが
ものすごく嫌だ。
居心地が悪いんだ…
だけど、その手を取りたいな。
好きな人と手を繋いで歩くなんて憧れしかない。
先生の手はあったかいから、だいすきだよ。
「…じれったいなお前は」
言葉の割に優しい声。
耳に届いた途端に、左腕をくいっと引かれ、
ポケットから手が抜けてしまった。