第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
映画を観る時、
ポップコーンが王道だと言い張る俺に
まるでそれに逆らうように
睦はプレッツェルを買った。
…プレッツェルって!
「俺に対する挑戦か」
「なに?」
「いーや。なんでも」
「…?」
やっぱり首をひねりつつ、
座席に身を沈めた睦。
そんな睦、
いつもとは違った出立ち。
普段はラフな服装だ。
…まぁ、部屋で過ごすのだから
ラフな格好で当たり前なのだが。
今日は何故か、
the女子高生なスタイルだ。
ベージュ系のVネックのセーターに
一見スカートに見える
ハイウエストのショートパンツを合わせ、
黒いタイツに黒いショートブーツ。
フェイクファーのポシェットに
オフホワイトのピーコート…
可愛いんですけど‼︎
普段のラフな服装を見慣れている俺には
この新鮮な感じがたまらなかった。
連れて歩くのも楽しくなる。
……ガキかっての。
どうかしてるわ。
あーあ、
「食う?」
自分の気持ちを紛らわせるために、
全く違う話題を振ってみる。
指でつまんだポップコーン。
それをジッと凝視めて
「…先生甘いの好きだった?」
ぱちくりとさせた目を俺に向けた。
俺が差し出したポップコーンが
キャラメル味だったからだ。
「いや、特別好きなわけじゃねぇけど。
睦は好きだろ?」
朝だって、あのホットケーキたちに
たっぷりハチミツをかけてご満悦だった。
「ポップコーンは私のじゃないのに?」
「甘かったら睦も食うかなと思って」
「…私のため?」
「まぁ…損はねぇだろ?」
「……ふふ、」
ふにゃっと笑った睦は
俺の手からパクッとポップコーンを食べた…
まさかの行動に、少し驚いた。
「おいし」
パキパキと音を立てて
ポップコーンを咀嚼する睦は
にっこにこだ。
…今日は機嫌がいいな。
最近、何となく不機嫌そうなのが続いていた。
それが緩和されたような気がする。