第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
今はこうして一緒にいられるからいいが
睦が居ない学校でこれが香ると
会いたくて仕方がなくなるのだ。
睦を腰に巻きつけたまま
俺はフライパンを振り上げ
ホットケーキを返した。
可愛い睦に気を取られて
焦がすとこだった…
「もう7時過ぎたぞ。
支度もあるだろ、もう食わねぇと」
「んー…」
イヤイヤと首を振り
匂いに溺れるように鼻先をうずめる。
あー…
寝ぼけてるとめっちゃ可愛いな。
小せぇガキみてぇ。
わがまま平気でしてくるよな…
このままでも全然いいんだけど。
後で泣かれるのと比べたら…
しょうがねぇ…
この甘いのを手放すか。
「睦、」
寝ぼけているだけあって
名を呼ばれたくらいじゃ睦は
こっちを向きゃしねぇ。
…ていうか、ほんとに寝てんじゃん。
目は開かねぇし
呼吸は寝息っぽいし。
こんな状態で起きて来られた事が不思議だ。
これで抱きついてる力が抜けたら終わる…
「おーい、」
そうなる前に声をかける。
でも反応は皆無。
…寝てりゃよかったものを。
そんなに焼き立てが食いたかったか、
よっぽど映画が心配だったか…
仕方なく、
真っ白な頬に両手を添えてこちらを向かせ
緩く閉じられた瞼に唇で触れる。
開け、と言ったつもりだったのに
まったく効果なしだ。
「…こら、起きて来たなら目ぇ覚ませ」
「んー…」
返事は出来るらしい。
だがそこまでだ。
起きてるのは耳だけ。
頭と身体は起きていない。
こっち向いたまま
そんなふうに目ぇ閉じられるとな…
勘違いされてもしょうがねえと思うのよ。
…いや、
ただ寝てるだけだってわかっちゃいるけどよ…
キスでも求めているような睦に
(重ねて言うが寝てるだけだ)
ゆっくり顔を寄せ
そっと唇を合わせた。
柔らかく、
少し冷えたそこを温めるように食むと
クッと顎を上げて
自分からも押し付けるようにしてくる。
睦がこんなふうにするのは初めてだ。