第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
「どっちか言ったら
もう食いたくねぇんじゃねぇのか?」
抱きしめる腕に力が入る。
この人には、容易に想像出来ただろう。
小さい私が1人キッチンで
ホットケーキを細々と焼いている姿が。
そんなの想像もしてほしくないけれど。
「もともと好きなんだよ。
それに、先生が焼いてくれるなら、
もう淋しくもないかなって…」
なのに私は
先生の腕の中で安心しきっていたせいか
本当の事を口走った。
淋しいって言っちゃったよ。
訊かれもしないのに自ら認めてんの…
いらない情報を渡してしまった。
だけどきっと、先生にとっては
必要な情報だったに違いない。
もしそうなら、まぁいいかも。
先生にならいいやと
やっと思えるようになってきたのだ。
先生は、自分の思いばかりではなく、
いつも私を1番に考えてくれるから。
「バターとハチミツ、たっぷりがいいなぁ。
厚いヤツじゃなくていいの。
薄いのを何枚も積んだのがいいな」
いつか読んだ絵本のホットケーキみたいに。
「わかったよ、
倒れそうになるまで積み上げてやるから
楽しみにしてろ」
「…ほんと?」
「あぁ、全部食えよ?」
「えぇ…!…なら直径5センチに…」
「ややこし……ンな小せぇの作れるか」
心底嫌そうに吐き出して
「大丈夫だよ、俺の愛情たっぷりだから
ペロっと食っちまうだろ」
小さく笑った。
「んー…そうだと、いいな…」
「そうなるさ。もうないの?って
言うことになるだろうよ」
「私でも?」
「お前だからだよ」
「そうかな…そうなりたい、」
私も、たくさん食べたいと思うんだよ?
なのにすぐにお腹が膨れるの。
食べ慣れていないから
いっぺんにたくさんは食べられない。
少食だねって言われた事があるけれど
その時、すごく悲しかった。
そんな所も私は不出来なんだと思わされて。
だけど、
「俺が作るんだ。だからそうなるんだよ。
きっといっぱい食べられる。だって
そもそも睦のリクエストだしな」
……
そんな先生の言葉に救われたような気がした。
「うん…。楽しみだな…」
そう言ってしまってからハッとする。