第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
私が観たいと言い出した映画だ。
それなのにこんなのあり得ない…。
「行きたいな…でも、
起きられなかったらごめんなさい」
本当に楽しみにしていた。
話題の映画を観るのもだけど、
先生とお出かけできるかと思うと嬉しくて…
なのに、今のこの重たい気持ちはなんだろう。
怖くて…しょうがないのだ。
「あんま深く考えるなよ。
映画なんていつでも行ける。
お前の体調の方がよっぽど大切だ」
こんな事を考えているとは知る由もない先生は
容赦なく私を甘やかす。
「でも予約…」
私だって知らないわけじゃない。
先生は、既に映画の予約をしている事を。
そしてそれは、前払い制だった事も。
「そんなん睦が気にする事じゃねぇよ。
…熱は無さそうだな」
ぎゅうっと抱きしめたのは
発熱の有無を確かめるため。
そうわかっているのに、何だか落ち着かない。
毎晩、寝る時は一緒。
当たり前のようにこうやって
ぎゅってして寝るようになった。
もう、こうでなければ
うまく寝られないかもしれない。
…なんて、そんな恐ろしいことを思う。
「朝メシは俺が作ってやるよ、
和洋どっちがいい?」
「パン…」
「お前パン好きだなぁ」
くすっと笑われてホッとする。
何でも話せ
隠さずに言え
いつもそう言うくせに
こういう時は何も訊かずにいてくれる。
遠慮して言わない事なのか、
話したくない事なのか、
そこの見極めがこの人は完璧だ。
おかげで私は
本当の心地よさを知った。
だけど先生は、疲れるだろうなぁ…
「…ん?なんだ?」
「やっぱり…ホットケーキがいい…」
「…ホットケーキ…」
あれ?
「…ヘンかな?あ、
めんどくさい?なら自分で…」
「いや、ヘーキ。ただ、初めて聞いたからよ。
好きだったのか?」
「うん…。大好き」
「そうか」
「小さい時よく自分で焼いたんだ。
もう私の身体、ホットケーキで出来てるかも」
「…それは、」
先生が言いにくそうにしてるのがわかって、
私は笑う準備をした。