第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
「明日休みだし夜更かしも悪くねぇだろ」
「あ…もう、休み…?」
先生の腕の中で
私はぼんやりと呟いた。
だって、もう1週間が終わったのだ。
しかもほぼ、無意識のうちに…。
「あぁ、…なんだ。曜日感覚ねぇの?」
「……」
なんて事だ。
3月に入ったばかりだと思っていたのに
もう1週間が終わっただなんて…。
……高校生活も、
あとわずか1週間、てこと…?
卒業式、泣いちゃったらどうしよう、
なんて心配はない。
楽しかった高校生活も終わっちゃう淋しい、
なんて事もありはしない。
悲しい事に、だ。
だって、離れ離れになって
淋しいと思う友達すらいないのだ。
私の頭の中を支配しているのは、
先生との『その先』。
そこ一点だけだ。
「…おい、調子悪ィのか?
なら早めに休まねぇと…」
少し様子のおかしな私の額に
大きな手を充てがいながら
先生は勘違いをする。
…違うって!
「大丈夫…」
さわらないでとその手を払うと
先生は不思議そうに目を見開いた。
「……そうか」
そんなふうに
ちょっと淋しそうに言われると
ものすごく悪い事をしたみたいで
自己嫌悪に陥ってしまう。
だけどこの不安定な気持ちは
どうすることもできなかった。
いつもみたいに、
なんかあったのか?って
優しく聞いてくれていたら…
答えられたかもしれないけれど
こちらから全てを話すなんてこと
どうしたってできないのだ。
まったくもって情けない事だけど。
「うん…」
「明日、朝起きられるかな…
まぁ睦の体調次第だな」
「明日…?」
ぽつりと繰り返してしまいハッとする。
そうだ…
映画観に行く予定だったんだ。
楽しみだったはずの映画の事も
忘れてしまっていたなんて…
先生には気づかれたに違いなかった。
「いいよ、無理しなくたって。
いつもみたいにゆっくりすんのだって
悪くはねぇしな」