第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
夜寝るのが怖い。
んー…怖い、というのは違うかも?
でも、ぴったりな言葉が見つからない。
不安…?いや、…戸惑い?
とりあえずだ。
寝ると朝が来る。
夜に眠ると、まず間違いなく、
次に目を開いた時には朝になっているのだ。
それがどういう事かというと…。
確実に、卒業の日が近づいているという事で。
幾度となく、
卒業の日まで我慢すると打診されてきた。
何をって…。
キス以上のことを。
私も、それに対して
ちゃんとした返事をして来なかった。
だから、私にわからせるように何度も
繰り返し言われたんだと思うのだ。
そのせいだろうか、
そのことが頭から離れないのは。
今や1日が終わるのが
気になって気になって仕方がなくなった。
だって、意識しろって言われてるのと
同じだと思うんだよ…。
わかってるよ、先生だからね、
生徒には手を出しませんて、
そう言葉にしなくては
先生だっていられなかったのかなって
なんとなくわかってはいるつもりだけど。
でもいざその日を決められていると思うと
緊張が半端なくて…
「…睦」
こんなふうに考えてしまうって事は
私にはまだ、覚悟がないってことで…
「おい…」
小さい時から
あんな目に遭って来たせいかな。
ほんとの恋なんか
できるとは思っていなかったのに
まさかまさか、出逢ってしまったこの気持ちに
戸惑いがないわけなくて…
「おい睦って!」
「はい!」
びっくりして返事をすると、
隣にごろんと横たわっていた先生が
私の事を心配そうな目で覗き込んでいた。
「ごめん…なに?」
「…大丈夫かお前」
大丈夫じゃない。
「何が?」
「寝らんねぇの?」
ベッド脇の時計は0時47分。
こんな時間まで起きていたら
心配されてもおかしくない…
「…うん、」
「まぁ、そんな日もあるよな」
特に深くつっこむこともなく
優しい調子で言って
先生は私を、
いつも通り抱き枕よろしく抱きしめた。
この安心できる環境が、
今は落ち着かなくさせる。