第47章 .☆.。.:..渾然:*・°☆.
「そうか、ならいいんだ」
「……?」
どうしたのかと思っていると、
にっこりと笑った宇髄さんは
「あんな短時間しかいられねぇのに
会いになんか来やがってって言われたら
俺もうどうしようかと思ったわ」
心底ホッとしたように言った。
「お前に会いたくて会いたくて来たんだ。
睦だってそれを望んでたんだって…
それは俺にとっても嬉しい事だ。
一緒に喜んでやれる」
「一緒…」
「そりゃあ、何でも一緒だろ俺らは。
ほら、濡れたのも一緒だ。着替えするぞ」
「しない…」
「………するぞ、」
「しない」
「…着替え、」
「しない」
「しないって何だよ。
それは、どういう意味で?」
「……」
「こら」
黙り込んだ私。
言いたい事がある事には気がついたはず。
もったいつけた方が、
効果的でしょ…?
「せっかく濡らしたのに、着替えて終わり…?」
本気だから。
そーいうことを言っちゃうのよ。
ほんと、特殊な誘い方をしてくれる。
おかしいとは思ったよな。
まぁ、想いが溢れたのかもしれねぇけど
それでもあんな、
わざと池の中に飛び込ませるような行為。
…睦が
真っ直ぐに『抱いて』なんて
俺に言えるワケがねぇか。
これが精一杯…
それでもよくやった方?
そこまでしてでも、
忘れたい事があるんだよな。
口で言えない分、上手にそっちは事を運んだよ。
「じゃあ先に栄養摂ろ」
俺は気づかないフリで部屋を通り過ぎた。
「いらない…」
「はいはい、でももう着いたし」
俺の部屋の棚の上。
どんと置かれた大きな瓶。
黄金色に輝くそれを手にして
今度は匙を取りに…
「お腹すかないのに…」
「甘露寺の蜂蜜には興味あるだろ?」
「……」
甘いもの大好きなくせに。
惹かれているに違いないのだ。