第47章 .☆.。.:..渾然:*・°☆.
考え込んでいる睦を抱えたまま
戻ってきた自室の真ん中に
どすんと腰を下ろした。
膝の上に座らされた格好の睦は
恨めしそうに俺を見上げてくる。
そりゃそうだ。
気持ち悪いだろう…
着物が濡れたままで。
着替えたい、と早く言え。
でなきゃ俺もこのままなんだぞ。
でも意地張ったままだったら
ずっと濡れた着物でいる事になるのだ。
俺かな?
俺が、脱がしてやればいいの?
でもさぁ、それでいいのかなー…と、
思うわけよ。
ここには楽しめるものがたくさんある。
こうやって美味いものもあるし、
庭の散策もできる。
鯉にエサやってもいいし
そういうのでも、
充分悲しみを忘れられるはずだ。
それにはいくらでも
つきあってやるよ。
俺に抱かれて忘れようとか、
そんな了見の狭い事を言わないで。
せっかくお前の好きで溢れた場所なんだから。
……って。
匙から溢れてしまいそうな
蜂蜜を食わせてやりながら
延々と言い聞かせてやると
ちょっと頬を染めて、
じゃあ散策したいとか…
向こうの花がどうなったか見てみたいとか
いろんな要望が飛び出してきて
忘れたいあれこれを、
簡単に忘れられるとは思わねぇが
少しでも軽くしてやれるのなら
全部やらせてやろうと
心に誓ったのだった。
だって、ここを楽しめるのは今だけだ。
どうせ寝る時間も惜しんで、
愛し合うのは目に見えているのだから。
☆彡