第47章 .☆.。.:..渾然:*・°☆.
「絶対だよ?」
「あぁ、絶対な」
優しいね…。
現実主義の彼の事だ。
そんな『絶対』はあるわけがないって
きっと思っているに違いない。
でも正論をぶつけるんじゃなくて、
私が欲しい言葉をちゃんとくれるの。
ありがとう…
お父さんと私の事を
間近で見てしまった宇髄さんは、
何とか私を元気付けようと必死なはず。
だから、昨日からただ優しくしてくれる。
それがあまりにも心地よくて
クセになってしまいそうだよ…
「…その割には、お前から離れてくんだな」
「えぇ…?」
「寝てる俺放置して勝手に庭の散策してただろ、
俺も連れてけよ。ちゃんと起こせ」
「…ごめ、なさい…あれは、
そんなつもりじゃなくて…
起こすの、悪いなぁ…って…」
濡れて張り付いた銀糸の髪を
肌から剥がすように掻き上げながら
私は言葉選びに悩みつつゆっくり紡いだ。
「俺がそれをしたら泣いて怒るのは
どこのどいつだ?」
…そう、私だ。
1人で起きる朝は嫌いだと、
いつも彼に訴える…
随分と勝手な話だ。
「…ごめんなさい」
「あー…ばかだな真に受けるなよ、」
そう言った唇が
私の涙を拭った。
「ほら、もう泣かないの」
優しい声が私の心を溶かす。
そういえば、
この人はずっと笑っていた事に
今更気がついた。
私が前に進まない限り、
この人は果てしなく私を甘やかすに違いない。
早く立ち直りたい。
心の奥に巣食う闇を払拭したい。
だけど、
こんなふうに甘やかしてもらえるなら
このままでもいいかな…なんて
おかしな事を考えてしまうのだ。
でも、
それも許してくれるかな…?
いつもならこんな事じゃいけないって
思うんだけど
よっぽど弱っているからか
そんな気にもならないの。
「ほら、さすがに身体冷やす。
もう行くぞ」
私ごと軽々と立ち上がられて…
水を含んだ分重たくなっているはずなのに
そんなのまったく感じさせないくらいだった。