第47章 .☆.。.:..渾然:*・°☆.
「…っ、」
見捨てるのも、
救うのも、
どちらも悪いことのような気がするの
どうしたらいいかわからなくなって
嗚咽を漏らした時
まるでそれを聞きつけて来たかのように
大きな影が池の中に落ちて、
「泣くくらいなら助けてやれよ」
小さな鳥をいとも簡単に掬い上げた。
袖口でその羽を包んで水滴を取ってやり、
まだ掌にとどまっている小鳥に
ふうっと息を吹きかけ、
飛んでけと後押しするのに
その子は一向に飛び立とうとはせず、
「…なんだよ、もう飛べるだろ」
優しく笑って言う。
足を水に浸したまま、
橋との境目に立っている私を
宇髄さんはふと見上げ、
その子を乗せた手を私まで伸ばした。
「お前が、生かしてやんな。
救える命を、泣きながら見送るな」
「でも、…野鳥に手を出すなって…」
「俺の庭だ。誰にも文句言わせねぇし。
だいたい睦が泣いてんだぞ。
俺がほっとくと思うか」
「……私は、」
「助けたかったんだろ?」
ぴたりと言い当てられ
私は言葉を失った。
そうだ。助けたかった。
「でも、自然の摂理ってヤツに従ったんだよな。
誰の教えだ?」
わかっていてそんな事を訊くの?…
「…おと、さん…」
にっこり笑って、大きく頷いた宇髄さんは
「そうか、
ちゃんと言われたこと覚えてたんだな。
えらかったな」
当たり前みたいに褒めてくれて
私は少しホッとする。
「でも、ここは俺の庭だからな。
俺のせいでこの鳥が死んだら後味悪ィなぁ。
だからここでは、迷わず助けてくれねぇか」
わざと、そんなお願いをしてくれた。
「したいようにしていいよ、
お前のする事は、間違ってねぇからな」
宇髄さんが笑うと
その手にとまっていた小鳥が、
そうだよ、とでも言うように
私の方に向かって飛んできてくれて
肩口にちょこんと掴まった。
…子どもの頃に戻ったみたいだ。
よくこうやって、とまってくれたっけ。
あの時
野鳥を見るたびにお父さんを思った
独りぼっちの部屋で