第47章 .☆.。.:..渾然:*・°☆.
「あー…」
ふらふらと俺の胸元に辿り着き
しばらく動かなくなった。
「急に動くヤツがあるか。
お前は今から
勝手に動いたらだめな事に決めた」
「勝手に…?」
うずもれたまま、
くぐもった声で睦が訊く。
「俺の許可なく動くの禁止」
「えー…」
めんどくさい…
そんな言葉が聞こえて来そうな物言い。
でも俺は許しません。
「勝手に動いたら…」
「…動いたら…?」
「もう動けねぇように簀巻きにしてやる」
「えぇッ」
睦はびくりと肩を揺らしたが、
「まぁ、水ん中にぶっ込みはしねぇから」
そういう事だ。
…当然だけどな。
「……」
「あれ…睦…?」
何も言わなくなってしまった睦を
少し覗き込むようにすると
眠ってしまったのか、
力がなくなったのか、
単に安心しただけなのか…?
ただ、眠ってしまったのなら、
このまま起こすのもしのびない。
「……」
こちらも黙って様子を窺った。
しばらくしてもそのままいるので、
やっぱり眠ったかとも思ったが…。
俺はそのまま庭へと目をやった。
遣り水からの池。
そこに橋。
向こうには東屋、
更に向こうには満開の桜。
野鳥も遊びに来るこの庭は
見れば見るほど美しい。
…俺が作らせたんだから当然だが。
聴こえてくるのは、
水の流れる音と鳥の囀り、
風の奏でる、草木の音色。
目を閉じても、充分楽しめる。
「宇髄さん…」
「おぉ、」
やっぱ起きてたのね。
まぁ…そうだよな…
「…独り言…」
「あぁ、独り言な」
「寝られません…」
「俺、寝ろなんて言ってねぇだろ、」
なんて、
つい返事をしてから
しまった
と、口を塞いだ。
「独り言…!」
「はいはい、悪かった…」
独り言に返事は禁物だ。
「目も頭も冴えて、寝られません…」
「……」
「寝られるまで、
こうしてくれると、嬉しいです…」