第47章 .☆.。.:..渾然:*・°☆.
ふと覗き込むと、
目は開かれているものの
虚ろで焦点は合わず
何かを見ているわけではないようだった。
この落ち込みようはよっぽどだ。
まぁ、さっきの今だ。
そんなに簡単に浮上できるワケがない。
時間はあるし、焦る必要もないか。
「睦…茶でも淹れよう、」
あんなに泣いて、涙も喉も枯れただろう。
もたれ掛けさせていた身体を引き起こしてやり
1人で座らせてみる。
すると思ったよりもちゃんと座る事が出来たので
「待ってろな」
ぼんと頭に手を乗せて立ち上がるが…
ガシッとものすごい勢いで
俺の腕にしがみつき
「…かないで…ひとりにしないで……」
さっき、我慢させた台詞を吐き出して
睦はまた泣き出した。
泣き叫ぶのとは違う、
ただ静かにはらはらと。
「睦…1人になんかしねぇよ。
ちゃんとここにいる。
何か、飲みたくねぇか?」
「いや…ひとりにしないで…」
抑揚のない話し方。
悲しみに沈み込んだ睦は
やっぱり痛々しい。
「……わかったよ、一緒にいような」
この現実はあまりにも残酷だな。
睦の心を蝕むには充分だ。
だが、ひとつ疑問に思う事がある——
「睦、」
名を呼んでも、顔を上げすらしねぇ。
…なぁ睦、
「俺が、誰だかわかってるか…?」
何となく、
俺に違う誰かを重ねているような気がして
ちょっと確かめてみる。
この声が届くのかすらわからない。
それでも、少しずつでも伝えなければ
睦は迷子になったまま
そこから抜け出て来られなくなりそうだ。
「……」
戻らない答え。
仕方なしに、
睦の頬に手を添えて上向かせると
虚ろな瞳に無理やり映り込み、
「俺は、誰だ」
わかりやすくゆっくりと語りかけた。
俺の事を見ているくせに
映そうとはしない睦。
耐えられない現実から逃げたくなるのは
みんな同じだ。
だけどそれを乗り越えなければ
お前の未来はないんだよ。