第46章 .☆.。.:.贖罪。.:*・°☆.
「そ、他。俺以外のヤツには
我慢しなきゃならねぇ時もあるだろうが。
…俺にはしなくてもいいって事な」
こう言っても我慢するんだ。
身に染みついちまってるからな。
だからこそ、俺は言い続けるのだ。
「善処します…」
「おぉ、いい心がけだ」
睦にしては
前向きな考えだと思い
その言葉を噛み締めていたその時だ。
またあの、大きな声が聞こえてきた。
不審者が現れたのだろうか。
……不審者?
この間、町中で追われていたあの男…
俺たちとすれ違いざまにこちらを振り返り
目の合ったアイツだ。
「まだ遠くへは行っていないはずだ!」
「必ず連れ戻せ!」
そんな声が表通りから響いてくる…
「……宇髄さん、」
睦の耳にも確実に届いたであろう
あの大声…
オシゴトなのはわかるけど
うちの睦を怯えさせないでほしい。
「大丈夫だ。あぁやって警察が動いてるんだし
今は俺もいるだろう?」
「はい…」
この間の男と同一人物であるのなら
随分とうまいこと切り抜けているんだな。
警察があんなに血眼になっているくらいだ。
よっぽどの重罪を犯したのだろう。
だがこんな捕り物、
なかなかお目にかかれるモノじゃない。
って事は、同じ男である線が濃厚だ。
悪そうなヤツには見えなかったが…
人は見かけによらねぇってか。
その時、
通りかかった建物の影から、
1人の男が飛び出して来た。
多分、俺たちの気配に焦ったのだろう。
隠れていたはずの物陰から
逃げなくてはと思ったに違いない。
それは間違いなく、
警察から逃げていたあの時の男で。
俺たちの存在に気づくと
凍りついたかのように動かなくなった。
咄嗟の事に、睦は固まったまま。
俺たちと対峙する形になったその男は、
じっと睦の事を凝視めていた。
明らかに、こいつを狙っている…