第46章 .☆.。.:.贖罪。.:*・°☆.
でも、これが天然だから
手に負えねぇワケよ。
「桜、好きだなぁ」
「はい、今しか見られませんから」
ほくほくした表情で
睦は桜色の空を見上げた。
まぁそれを見越して、
こんな場所を記憶しておくワケだけども。
何かの時に、役立つために。
それから、睦が楽しめるように。
あー、それにしても、
もうしょうがねぇな…
『睦の安全を守る為の脳内会議』は
今は始められそうもねぇ。
今夜寝る前にでも開催するとしようかねぇ……
俺が本気出して考えてるってのに
睦は舞い落ちて来る花びらを
捕らえられるかどうかで遊んでいる。
楽しそうに笑いながら
両手で挟みに行ったり片手で受けたり…
…呑気なこった。
怖ぇ目見たこと、忘れてんじゃねぇだろうか。
それとも、
俺が隣にいればそれでいいやとか思ってる?
そんなふうに考えてくれてても全然いいぞ。
「楽しそうネ」
ちょっと話しかけてみると、
「はい、楽しいです!
たくさん降って来ますね…こんなに咲いてても、
散って、しまうんですよね…」
切なげに細められた目が
掌の中の花びらを凝視めた。
睦は花びらを潰さないよう
空間を作って握り込み、
それを胸にそっと充てる。
確かにそこに存在していたものが
消えて行く様は
切ないものだよな…。
お前は今
その桜と何を、重ねているんだろうな。
俺の視線に気がついたようで、
目も合わせないまま固まった。
「……ごめんなさい、色々…
考えすぎちゃいました」
「そうだろうと思ってた。
そういうの、全部話してもいいぞ。
睦が楽になるんならな」
「はい、…ありがとうございます」
にこっと笑みを作り
こちらを向いた睦の顔は
とても晴れやかで
何ら心配する要素はないように見えた。
「宇髄さんは桜が似合いますねぇ。
華やかで、潔くて」
「それを言うなら睦だろ」
たおやかで儚くて、
なのにそれを支える幹は強くて…
磨けば磨くほど光沢を放つんだ。