第46章 .☆.。.:.贖罪。.:*・°☆.
「えらいえらい、よくやったな睦」
え?と顔を上げた睦は
目の前に広がった光景に言葉を失った。
たどり着いたのは一面薄紅色に溢れて、
時折吹く風に花びらを舞わせている
早咲きの桜が立ち並んだ場所。
既に落ちた花びらは
薄紅の絨毯を作っていて
見事に咲き乱れている桜を見上げながら
睦はそこに足を踏み入れた。
「綺麗だろ」
俺の行動範囲内に、
睦の好みそうな所を数カ所見つけてある。
そうして隠し持っているのだ。
こんな、いざという時のために。
さて、
ここなら睦は存分に楽しめるだろう。
俺たち以外の人間もいねぇ。
俺もゆっくりと、
今後の対策を練れるってモンだ。
そう思って、
手近な桜の根元に腰を下ろすと…
俺に寄り添うようにして
睦が俺の隣に座り込んだ。
「あれ。何してんだお前。
桜見て来い」
「一緒がいいです」
「は?」
「宇髄さんと一緒に見たいの」
「あー、おー…そーなんだー…」
「……」
じっと俺を見上げた睦は
何かを感じ取ったかのように、
「…お邪魔でしたか?」
そこから俺を見上げた。
そんな目でそんな事を言われちゃあ
「いいや。睦が邪魔なワケがねぇ」
そう答えるしかねぇ…
いや、邪魔でない事は事実だ。
ただ…俺は考え事をしてもいいのかな?
俺は今から、
お前を脅(おびや)かす野郎の撃退法を考えるから
桜でも見ておとなしく待ってろよ、
なんて言えるワケがねぇし。
いや、言ってもいいけど、
そんなん気ィ遣わせるだけだろう。
ヘタすりゃ余計な事を思い出させるだけ。
…無駄な情報だ。
あーあ、
俺と一緒に見てぇんだってよぉ。
可愛いこと言いやがんの。
んなこと言われたらさ、
見ねぇワケにはいかねぇだろうが。
俺の心理を知り尽くしての行動か?
そうだとしたら睦は天才だ。