第46章 .☆.。.:.贖罪。.:*・°☆.
そうなると、
話は志乃さんや弥彦さんの耳にも
入るかもしれねぇ。
それだけは避けたかった。
…なぁんていう事を考えて、
俺は手を離したってのに
「………」
袖がクッと引かれ
俺は反射的にそこへ目をやる。
すると、
きゅっと唇を一文字に引き結び
目を泳がせて頬を染めている睦がいて
……
「……いいのか?」
何の事だか
わかってくれるテイで話を進めると
「…はい。…まだ、怖いってことに
しておいてもらいたいです…」
「……あー…」
そんな言い訳をするって手があったか。
「そうだな。はぐれてもいけねぇし…
そうして掴まっててくれりゃ
攫われることもねぇか」
もっともらしい理由をつけて
俺は睦に
そうしていてもらおうと考えた。
本当なら、懐に仕舞っておきてぇところだ。
それをこんなふうに、人目に曝してるんだ。
手ぇ繋ぐだ、袖口掴むだくらい
どうってことねぇんだよ。
人目なんか関係ねぇの。
俺の好きなようにしてぇのよ。
睦のために
我慢してるけどな、これでも。
「…睦、
まだもうちょい歩くが…
足大丈夫か?」
「はい!最近、随分と体力がついたんですよ!
それくらいへっちゃらです」
空いた手で拳を握り、
ありもしない力瘤を作って見せた。
「おー、そりゃ頼もしいわ」
可愛すぎて笑えてくるっての…!
さっき、あんなに頼もしかった筈の睦が
「宇髄さんまだですか…?」
死んだモンみてぇになって俺に訴えた。
「あれー?さっきの勢いはぁ?」
既に人気のなくなったそこ。
それもそのはず、
ここはもう山の中だ。
歩き慣れない睦には
ツラいだろうデコボコ道。
音を上げても不思議はない。
よく今まで文句もなしについて来たものだと
むしろ褒めてやりてぇところだ。
「うぅ…そうなんですけど…」
重たい脚を引きずりながら
睦はそれでも俺についてくる。