第46章 .☆.。.:.贖罪。.:*・°☆.
「はい」
大きく頷いた睦を見届けてから
ゆっくり背中をさすってやり腕を解いた。
少しだけ淋しそうにするのが見えて…
「ほら、」
手を差し出してやると
条件反射のようにぎゅっと握られる。
素直で大変よろしい。
「勝手口開けてるのか?」
「はい…」
睦の家は古い。
志乃さんから譲り受けたものだ。
故に、満足な鍵なんかついていなかった。
在宅の際には、
内側からかける鍵がある。
出かける際には
内側からつっかえ棒をして
勝手口から出る。
ただ勝手口にも鍵なんてモンは無ぇ。
ぽつんと建つ一軒家。
しかもほぼ山の入り口。
『こんな所まで来る泥棒はなかなかいない。
盗られるような高級品なんかないし』と
睦はいつも笑っていたが、
こんな事があるんじゃあ、
扉を頑丈なものに変えて
しっかりとした鍵もつけさせるようにしよう。
今は明るいし、俺がいるからいいものの…
睦のために俺が動くと
いつも遠慮をするこいつも、
今回ばかりは素直に頷く事だろう。
カラリと
息をひそめて勝手口を開けた。
部屋の奥を窺うも
やはり人の気配は無かった。
「……どう、?」
俺の背中に額を押し当てた睦。
さっき俺が『何も見るな』と言った事を
素直に守っているようだ。
可愛いにも程があるな…
「大丈夫みたいだな。
荒らされてる様子もねぇ。
中には入ってねぇんだろ」
「…そ、ですか…」
ホッとしたせいか、
全体重でもたれかかって来る睦。
「おー歩けるか?」
「ん…大丈夫…」
大丈夫ではなさそうだ。
「もー…こわいよー…」
付けた額をズルズルと擦り下ろしていき
その場にへたりこんでしまった睦。