第46章 .☆.。.:.贖罪。.:*・°☆.
その仕草が小動物のように愛らしく、
俺のやましくも邪な考えなど
簡単に払拭して下さった。
どうなってんだコイツは…。
敵わねぇって……
「桜…早く咲くといいなぁ…?」
睦から視線をずらし
そこに佇む桜を見上げた。
するとそれにつられて
睦もそちらへと目をやる。
「はい…!楽しみですけど、…」
「けど?」
妙な所で言葉を切った睦に
俺は再び目を戻した。
睦は桜を隅から隅まで見回し
「咲いたら、終わってしまうから
まだ咲かなくてもいいなぁなんて…。
ふふ…咲くのが楽しみなのに
咲いて欲しくないんです。おかしいなぁ」
小さく自嘲する睦。
いつか散ると知りながら、それを求めてしまう。
儚いから美しいとは
げに切ないことか…
「…この桜が咲いたら2人で見に来よう。
また、枝の上に乗せてやるからな」
絡めた指を強く握る。
「えぇ?下からでいいですよ」
睦はそれを握り返して苦笑した。
「下からだけなんてつまらねぇ。
怖ぇなら俺の膝に乗っけてやる」
高い所が好きなくせに怖がる事は
ちゃんとわかっている。
「あ、それなら平気です…」
言ってしまってからカッと頬を染め
「べっ別にそうして欲しいって言ってるわけじゃありませんからね!」
強く俺を見据えて言い放った。
……
「いや、そんなふうに思ってねぇけど…。
でもそうなんだろ?」
そんな言い訳をし出すってことは…そうなんだろ。
「違うって言ってるのに!」
ムキになって言う所がね。
可愛いよな。
「はいはい」
もうそう言うしかねぇわ。
つい笑ってしまった俺に
不満そうな顔で腕を小突いてくる。
こんな時間は本当に幸せだと思う。
「痛ぇ痛ぇ」
「もう…!」
「よしよし、イイコだなお前は」
頬を頭のてっぺんに擦り付けて
撫でてやるも、
まだ少ししかめっ面の睦は
それでもちょっと嬉しそうに見えるのは
気のせいじゃないはず。