第46章 .☆.。.:.贖罪。.:*・°☆.
みんなが
無抵抗のお父さんを殴ったり
責めたりしていて
変わり果てたお母さんに
羽織をかけたりしていた…
私は、
必死にお父さんを呼んでいた気がする
お父さんが悪で、
お母さんが善であるような
周りの人間の扱いが許せなかった。
なにも知らないくせに…!
やめて
お父さんは悪くない
私を助けてくれたんだよ
小さな私が、いくらそんな事を言った所で
耳を貸す大人なんか1人もいなかった。
そのうち、
偉そうな声が狭い家中に響いて、
やっぱり靴のままの警察の人が
ずかずかと入ってきたかと思うと
お父さんを乱暴に立ち上がらせてせっついた。
今思えば、
自分のしてしまった事に
打ちのめされていたのかもしれない。
私は何度もお父さんを呼ぶのに、
1度も振り向いてくれる事なく、
お父さんは行ってしまった…
その日から、
私の世界は色を失った。
何を見ても、
何を聞いても
反応する事ができない。
ごはんを食べれば吐き戻し、
水すら飲む事ができなくなった。
眠りもせず、話しもせず、
それを、生きていると言えたのだろうか
「…ん…!…睦さん!」
はっと顔を上げると、
心配そうな須磨さん。
思い出してはいけない事を思い出してしまった。
周りが見えなくなるから
思い出したらダメなんだ。
「ごめんなさい!なんですか?」
「そろそろお休みになった方がよくないですか?
もう遅いですし…」
須磨さんが見遣った時計へと
つられて目をやると
すでに日付を超えていた。
「本当!
遅くまで付き合わせてしまって
ごめんなさい」
慌てて、裁縫道具を仕舞う私に、
「…そばに居ましょうか?」
須磨さんは遠慮がちに訊いてくる。
「え……大丈夫ですよ…」
そんな事は考えていなかったのに、
甘えさせてくれる人がいると思うと
そちらに寄って行ってしまう。
既の所で堪えたけれど、
「大丈夫そうには見えません」
須磨さんはしかめっ面だ。