第45章 .☆.。.:.笑って。.:*・°☆.
そんな軽口が叩けるようになったとは。
完全復帰を飛び越えている。
「好きな人なら、何しても好きって
宇髄さんが言ったんですよ」
なんだろう、
睦がちょっと甘い。
いつもは口にしないような言葉まで
すらすら言ってのける。
……あれぇ?
「もしかして俺、
ちょっと誘惑されてる?」
「こんな微妙なのによく気がつきましたね…」
くすくす笑う睦は
いつもとはまるで別人のようだ。
まさかのまさか。
睦がそこまでするなんて。
「誘惑、なんて
そんなに大したものじゃありませんけど」
「いや、ちゃんと届いた。遅ればせながら」
「バカみたいにいっぱい泣いちゃったので
…今度は笑っておこうって…」
「そんな簡単に切り替えられるヤツ
なかなかいねぇぞ」
「笑ってるフリは上手なんですよ?」
「フリじゃ困るな」
「じゃ心から笑えるようにして下さい」
睦の言葉は、狙ったかのように
俺の理性に突き刺さる。
くそぅ…
「……本気出したな」
「これでも淋しかったので…」
やっといつも通り
照れくさそうにした。
「俺も淋しかった」
「……宇髄さんはしょうがないでしょ」
「…まぁな」
俺の用事だったもんな。
「でも、それでも淋しかったんだよ」
睦の肩に顎を乗せて
大きく背中を抱きしめた。
素直に寄り添ってくれるあたり、
本当に淋しく思ってくれていたらしい。
やっぱりそれは、幸せだな…
「んー…おかえりなさい」
………
「は…?」
あまりに唐突で
俺の頭は真っ白になった。
おかえり、って?
「言ってなかったなぁと思って…」
ちょっと恥ずかしそうで、
だけど幸せそうに
睦は俺にしがみつく。
そっか…
俺は、帰ってきたのだ。
「…ただいま、」
帰る場所があるのって、
こんなに幸せなことなのか。
「ありがとな」
「いえ。私こそ、
ありがとうございます」