第45章 .☆.。.:.笑って。.:*・°☆.
「宇髄さんだって、
きっとすごく辛い思いをしてきましたよね」
「俺はいいんだよ。
お前がそばにいる幸せがあれば
そんなモンいっぺんに吹き飛ぶからな…」
間違いなく、俺の本心だ。
「そんなの、私だって同じです…」
自分の目の縁を指先で拭いながら
睦はスンッと鼻を鳴らした。
やっと泣き止んだ。
「可愛いコト言ってくれるのネ」
よしよしと頭を撫でてやると
その手をぎゅっと掴み
頬まで持っていき擦り寄せて来る。
まさかそんな事をされるとは思わず
柄にもなくドキッとした。
言うだけじゃなく、
仕種まで可愛いわ…
「私の事を思ってくれるのは嬉しいです。
だけど、私そんなにやわじゃありませんよ?
頼りない、でしょうけど……
私じゃだめですか?」
いやいや…
いやいやいやいや。
ダメだぞ睦。
お前が使える武器という武器を
ほぼ全て使いまくっているじゃないか。
甘えるようなその仕種。
それとは対照的な心強い言葉。
なのに無理強いするではなく
答えを俺に委ねたりして。
極め付けは少し濡れた
強請るみたいな上目遣いだ。
完璧。
完璧だ、睦。
俺のツボをおさえている。
さすがだ。
おかげで理性が吹っ飛びそうですよ。
「ダメじゃねぇよ?でもよ、
俺のためなんだって言うならな、
わざわざ俺の荷物を持つ必要はねぇんだ」
「でも…、」
話の途中で割り込んでくる睦。
その頬をこちらからも撫でてやると
ツと動きを止め、耳に意識を集中させた。
「お前が俺の事を知りたいっていうなら別だが
そうじゃなくて、
ただ俺のためにそばに居てくれるっていうなら
…ならさ、そのままでいい」
「このまま…」
いまいち腑に落ちないような顔で
俺を覗きこむ。
疑わしいか…?
「あぁ。睦は、
俺にとって最高の癒しなんだ。
お前と居られればそれでいい。
欲を言えば、それで俺の話をただ聞いてくれて
抱きしめさせてくれたら
俺の忌まわしい荷物なんか
失くなったのと同等になるんだよ」
睦は、俺の話をただ黙って聞いていた。