第45章 .☆.。.:.笑って。.:*・°☆.
「そうか!では睦の涙の原因は
宇髄という事で決まり、なのか?」
2人は会話の末に出た答えを
私に尋ねて来る。
「違いますー」
「何でもっと泣くんだよ!」
「私が悪いって言ってるのに!
宇髄さんを悪者にしないで下さい!」
わぁんと声を上げて泣き出すと
「わかったわかった!」
「そんなに泣くものではない!」
「オイなんかねえのかよォ」
「美味いものでも持ってこよう!」
私の気を逸らそうと
2人は方々に動き出した。
ごめんなさい…
でも
この居心地の良さが仇となっているのです。
いくら私でもここまで
身勝手でわがままではない…はず。
「ほら睦、
廊下の向こう、
玄関の方から物音がして
「れーんごーくくーぅん」
間延びした大きくて良い声が
煉獄さんを呼びつける。
子どもが遊びに来たみたいな呼びかけに
一瞬ごまかされたけれど……
よく知る声ではないか?
呼ばれた煉獄さんの機敏な動きといい、
聞きつけた不死川さんの鋭い目つきといい…
もうほぼ間違いはない。
玄関から戻った煉獄さんの後をついて来た
大柄な影…
私の事を、置いて行った人…
無遠慮に頬を濡らす私を見つけ、
一瞬目を閉じて
申し訳なさそうに微笑んだ。
そんな顔をしないでよ。
何にも言われていないのに
もういいよって言ってしまいそうになるから。
だってさっきまでは
私が悪いって思っていたのに、
この顔を見た途端に
今まで泣いていた原因を
この人のせいにすり替える自分がいて…
私も大概、自分勝手だ。
「睦の泣き声がよぉ、
俺んちまで聴こえてくるから
ここまで迎えに来ちまったよ…」
私の前にしゃがみこみ、
「…ごめんな」
長い腕を私に向けて伸ばす。
私はそれを拒むように
膝を抱えてそこに顔をうずめた。
途端に、ピタリと止まる腕。
私は自分がした事も忘れて
心の中で宇髄さんを責めた。
…なんてイヤなやつ。