第45章 .☆.。.:.笑って。.:*・°☆.
私の身体を抱えて立ち上がらせてくれる。
それでもちゃんと立てない私は、
再び座り込んでしまった。
「睦、部屋に行くぞ」
いつのまにか千寿郎さんはいなくなっていた。
立てないのではなくて
立つ気がないのだ。
気力がない…
「……すまない」
煉獄さんの呟きは私の耳を素通り。
ふわりと浮いたような気がしたけれど
それすらどうにもできなかった。
「おー、お前どうしたァ」
硬い手のひらで
頬をぽんぽんされて
私の目はやっと目の前の景色を映した。
「睦、なにがあった。
煉獄が困りきってんぞォ」
何か言ってる…
「だれ…」
「れんごく!」
れんごく…
ちがう。
「煉獄さんは、こんな怖くない…」
もっとにこにこしてて。
「俺じゃねえわァ。
つうかてめえ、怖いってなんだァ」
「だってぇ…」
うぅ、と声を上げて泣き出した私を
よしよしと撫でながら
「なんだァ湿っぽいなァ」
困ったように眉を下げる。
口は悪くても優しいこの人が好きだ。
「なんで居るんですか」
「俺の方が訊きてえよォ」
やっと頭が回り出して
ここがどこでこれが誰なのか
やっと認識できるようになって来た。
それでも胸を支配する黒いものは消えなくて
ずどーんと沈んだままの私は
不死川さんの後ろに控えた煉獄さんに
目を向ける。
煉獄さんは少し困ったように笑う。
……あれ。
私、
「煉獄さん…」
「ん?」
呼びかけると
ふと見せたのはさっきよりも優しい笑顔…
だけど、
「私…煉獄さんに、」
ある光景を思い出し
私は煉獄さんを凝視めた…
真実を知って、立てなくなった私を
煉獄さんが運んでくれたと思う。
客間ではなく
この煉獄さんの部屋に来て…
みっともないくらいに
泣き続けた私を
ぎゅっと抱きしめてくれていた…
ような…
すごく長いこと、
煉獄さんの胸を借りて泣いたという事は、
涙とか鼻水とかで…
めちゃくちゃになったりとか
…したに決まっていて、
「ごめん、なさい…」
しかも泣いてるや私を
何時間も抱えて…疲れないわけがない。