第45章 .☆.。.:.笑って。.:*・°☆.
「睦!大丈夫か!」
呆然としている私の肩に手を掛けて
軽く揺さぶる。
大丈夫かと問われれば、
大丈夫ではない。
だってほら、指先が震えている。
千寿郎さんのさっきの言葉を
頭の中で繰り返すたびに、
その震えは全身へと広がっていく。
口元を覆う手も、
煉獄さんに掴まれた肩も
繰り返す呼吸ですら
カタカタと目に見えるくらいに震え出した。
その様子を見て煉獄さんは
何か察するところがあったのだろう。
反対側の肩にまで腕を回して
きゅっと力を入れて支えてくれた。
こんな時に、
誰かの体温はとても安心する。
だけど、震えは収まる気配がなかった。
知ってしまった事実があまりにも衝撃的で。
「宇髄さんは、…お仕事では、ないんですね、」
言葉にするのが恐ろしい。
でも、それが真実ならば…。
「ああ…」
煉獄さんが神妙な面持ちで頷いた。
「故郷に…?」
「…ああ」
「お墓、参り…ご兄弟の…?」
「そうだ。だが、俺も詳しい事は知らないのだ」
確認できた事実に、
震えに加えて涙が溢れてくる。
「私…なんて事を…っ」
家族に問題があるどころではなかった。
絶対に訊いてはいけないことを
私は平然と口にしていたのだ。
——俺はいい兄貴なんかじゃなかったしな
そんなふうに言った彼の顔が蘇る。
兄弟を亡くして
その古傷を抉られた彼が
あの時どんな思いでいたのか、
それを考えると私は
自分を保っていられなかった。
さめざめと泣く私の隣に
そっと寄り添ってくれる煉獄さんと
私の様子を見ておろおろとする千寿郎さん。
「ごめんなさい…!」
「いや、千寿郎は決して悪くない。
ひとつ頼まれてくれるか」
「…はい…!」
そんな会話がなされていた気がする。
だけど私はそれどころではなかった。
自分のした事への後悔で。
取り返しのつかないことをした。
あぁ…謝るにも、何からどうすればいいのやら
謝る?
そもそも謝って済む事なのか?
「睦…睦!」
「…え?」
「しっかりしなさい」