第45章 .☆.。.:.笑って。.:*・°☆.
「そうですか。…ではお蕎麦屋さんなど」
「えぇと…申し訳ございません。
そういった事には疎いのです」
「そうでしたか。唐突に
このような事を言ってしまい
申し訳ありませんでした」
「いえ。こちらこそ
お答え出来ず申し訳ございません」
…煉獄さんは何のために
あんな嘘をついてまで
あの場にいたのだろう…
まぁ、
敢えて追求はしないけれど。
「あの、僕からもひとつ、
よろしいでしょうか?」
「あ、はい!どうぞ…」
どうぞと言ったものの、
答えられることだろうか…
何を訊かれるのか
内心ドキドキしていると、
「あなたは…」
千寿郎さんはやけに言いにくそうにして
そっと私を凝視める。
……そういえば、
私から相手の名を尋ねておいて
自分は名乗っていなかった。
何て失礼なことを…。
「あなたは兄上の、…えぇと…
好い人,でいらっしゃいますか?」
「好い、ヒト……」
少し頬を染めながら千寿郎さんが言うから
…その意味が、じわじわと……
「ちっ、ちがいます‼︎」
大きな声で言ったその時、
「千寿郎、失礼な事を言うものではないぞ」
スッと開いた襖から
煉獄さんの笑い声が聞こえた。
洗練された所作で襖を閉め
テーブルを挟んで私の前へと座る。
「待たせたな」
にこっと笑ってから
「千寿郎、この人は宇髄の大切な人だ」
私に目を向けた。
「えっ」
ぴょこっと肩を跳ねさせた千寿郎さんは
私に向き直り
「大変失礼を致しました!」
ぺこりと頭を下げた。
うわぁ…!
「やめてください!そんな…」
困った私は煉獄さんに助けの視線を投げかける。
でも煉獄さんはにこにこするだけで
特に何も言いはしなかった。
頭を上げた千寿郎さんは
「後ほどお夜食などお待ち致しますので
それまでごゆっくりなさってください!」
ハキハキとそう言って……
「夜食…?」
私はそのひと言にひっかかる。
首を傾げると
「はい!用意して欲しいとの事でしたので…」
千寿郎さんは
違うの?と、煉獄さんを見上げた。
その仕種がとっても可愛らしくて
仲良しなんだなぁと
嫌でも伝わってくるようだった。