• テキストサイズ

【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第45章  .☆.。.:.笑って。.:*・°☆.





「勝手なこと言って、ごめんなさい…
私…宇髄さんならきっと、」

その先を言うのも憚られた。

だってこの人は、
兄である自分を良く思っていないのだ。
さっきの言葉からその事が読み取れた。
なのに、私が

『宇髄さんならきっと
素敵なお兄さんだったと思って』

なんて。
そんなこと、とてもじゃないが言えない。
あまりにも勝手すぎて…。

そんな事を言うには、
彼の事を知らなすぎるのだ。

続けるはずだった言葉が
言えない言葉だった事に気がついた私は
他にうまい言い方を探す事が出来ず、
宇髄さんを見上げたまま
黙り込んでしまった。

「…なんて顔してんだ」

小さく吹き出した彼は
いつものようにニカッと笑う。

「だぁいじょうぶだよ。
何とも思ってねぇから。
それより、
…ちゃんと答えてやれなくてごめんな」

口元を覆っていた手をそっと取って、
きゅっと握ってくれた。

あたたかい手…

わざと私の目の高さでそんな事をして
見せつけるような仕種をする。
私が戸惑うのを楽しむかのようだ。

…だけどそうはいかないぞ。
今日は耐えてみせるのだ。

手を繋ぐくらいどうって事はない。
そろそろ、それくらい慣れなくてどうする。
それ以上のあれこれだって
もう経験済みだというのに…

大丈夫どうって事ない…
頭の中で呪文のようにそう繰り返し
自分に言い聞かせる。

「……睦、」

こんな時、集中力が大切なのだ。
呪文を唱えながら
私はジッとその手を凝視めていた。
故に、
呼ばれた事にも気づかずに…。

互いの指を絡ませ組まれた時、
フッと影が差し、…
ふと目線だけを上げると
間近に彼の顔。

あれっ、と思っているうちに
唇が奪われていた。

びっくりして跳ね上がる身体。
そのはずみで少し離れた口唇に
彼は恨めしげな視線を寄越し、
そのまま目を閉じると再び私に迫った。

今度は、空いた方の手を
しっかり背中に充てがい、
私が離れないようにして…。

「……っ…」

ちょっと、
長いような…?

いつまでも離れてくれない宇髄さんに、
離れて欲しいとどうやって伝えよう?


/ 2219ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp