第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
「誰、って……」
彼の目に、輝いて見えたのは
どこの誰だったんだろう…
私には、この人が煌めいて見えていた。
でも、…
あれ…?
この人は、
私の事を好きでいてくれてるんだっけ?
そんなの、
私の思い違いだったんだっけ。
また私は、甘えた事を考えていたのかな。
自分が想っている人とうまくいかないから
自分を想ってくれる人に
逃げて、いたんだよ。
「あはは、そんな顔しないでよ」
目を泳がせる彼に
私は笑って誤魔化すしかなくて、
それなのに、
ものすごく悲しくて…
彼も、戸惑っているのがわかって。
なんで彼が戸惑ってるのかなんて、
そんなのさ…。
「睦…っ」
慌てた声は、
私の心を引き裂くようだ。
「どうした、やっぱ調子悪ィんじゃねぇのか。
なにいきなり泣いてんだよ…!」
そんな顔をさせたいわけじゃないの。
こんなふうになりたいわけでもない。
なのに、私はいつも
誰かに迷惑をかけてしまうんだ。
そんな自分が嫌だった。
だからずっと1人でいたのに。
優しいはずのこの人を
私はこんなにも痛めつける。
自分が楽をするために。
「そんなずるい事してるから
こんな目に遭うんだよ…」
「なんだ、何の話してんだ」
私は涙を拭いて、
大きく息を吸った。
「ごめんなさい。
今日はね、息がうまくできそうもなかったの。
だから帰って来ちゃったんだ」
いつもこちらを睨んでいただけの人が
私を想ってるだけの人になって。
自分もちょっと気になってくるようになって。
でも、この人と一緒の時間は
思ったよりも楽しかった。
人付き合いの苦手な私が
楽しいと思えるなんて
なかなかない事だったけれど。
「…誰とも会いたくなかった。
どこにも行かずに引きこもってるつもりだった。
だけど宇髄くんが来て…」
一瞬、表情を歪めた彼。
そんなつもりじゃなかったんだけど。
「ちょっと、…気が、紛れた感じ…」