第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
初めて見る睦のそんな表情に
つい見入ってしまった。
胸の奥が、小さく鳴いた…
「…いつから知ってたの、
って言ったの!」
「だから何をだよ」
「あの2人を、私が見ないように…
しなかった?」
「あー…」
そうだった。
さっき考えていた事だ。
『俺が見せねぇようにしていた事にも
……気づいたよな』
そう、それ。
あの行動は、
俺は睦の気持ちを知ってますと
言っているようなものだった。
「いいんだよ、私知ってるから」
「そう…え?知ってた?」
なんてこった。
「知ってるよ。すっごくきれいな人。
同い年なんだよ、信じられない」
睦は何でもないような言い方をする。
「…睦、」
呼びかけたものの、
何と言えばいいかわからず押し黙る。
目だけで見上げた睦は
俺の表情から何かを読み取ったようで…
「…ふふ、大丈夫だって。
もう乗り越えてるから」
そっと笑って見せた。
その顔はやけに大人びていて、
…また、見た事のない睦を見つける。
「それより暑い。涼しいとこないの?」
急にいつもの調子に戻った睦。
俺は、ホッとしていた…
新しい睦を発見できて嬉しい反面、
続け様だと…戸惑う。
置いてけぼりをくらっているような…
「聞いてる?」
「あぁ!…聞いてる、」
えーと、涼しいとこ?
……
「ていうか睦…」
確かに暑ィし、
涼しいとこ行きてぇけども。
でも
そんな事よりも…
「なぁに?」
チラッと俺を見てから
耐えきれない様子で1歩を踏み出した。
こいつは割と、せっかちなのかもしれない。
「それでもアイツが好きなの?」
見事に、1歩で止まる睦。
地雷なのはわかってる。
わかった上で、訊かずにはいられなかった。
両脚を揃えて、
キャンバスを両腕に抱きしめる。
真っ直ぐに俺を見て、
「好きだよ」
はっきりと言い切った。
そんなふうに言われて、ショックなはずなのに
この状況下でも
ここまで言い切る睦が
かっこいいと思った。