第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
「………」
俺の脇腹から覗き込んでいた睦は
…多分無意識に、俺のTシャツを握りしめた。
あんなモン見ちまって、
この後どうすんだ…?
気分も落ちるだろう。
しかもこれじゃあ、
俺が見せねぇようにしていた事にも
……気づいたよな。
という事はだ…。
「……行こ」
興味なさそうに呟き、
掴んだ俺の腹をやや乱暴に
そのまま引っ張った。
「お、い…!」
慌てた俺なんかに構いもせずに
睦はぐいぐい俺を引いて行く。
俺の位置からは、
睦の表情までは窺い知れない。
少し俯きがちにしている睦は、
泣き出しそうに見えるし
不機嫌そうにも見えた。
「おい…おいって…!
こっち反対だろ?」
目的地から遠ざかって行く睦に
声をかけても、
歩を緩める事はなくズンズン進み…
俺はどうする事もできなくて
それについて行くだけだ。
「なぁ睦」
「だって、行ったら会っちゃうもん」
やっと喋ったと思ったら
ボソボソと聞き取りにくい声…
機嫌悪っ。
でもその言葉につられて振り返ると、
確かに2人は、俺たちが行くはずだった
ショッピングセンターに入って行く所。
…そりゃ鉢合わせ、したくねぇよな。
余所見をしつつ
腹を引かれるままについて行く俺。
…と、
睦に突然ピタリと止まられて…
「う…っお…‼︎っぶね…!」
どしんと睦に体当たりする形になった。
睦が吹っ飛ばねぇよう片手で肩を抱え
つんのめった自分も転ばねぇように
なんとか踏ん張った。
「ばっかやろ!急に止まんじゃねぇよ…!」
「いつから知ってた?」
俯いたままの睦の声は
雑踏に紛れて聞き取りにくい。
でも耳に自信のある俺にはしっかりと届いていた。
ただ、意味がわからねぇ。
「なに…?」
俺が訊き返すと
睦はパッと顔を上げた。
その表情は、
困っているような、怒っているような、
でも頬は染まっていて…