第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
睦がもう片方の手に持っていた
スムージーのカップはいつの間にかカラ。
「それ貸しな」
手を伸ばし、寄越せと
指先でくいくいと招いた。
「え、…いいよ」
それがカラのカップを指すのだと
気がついた睦は
腕を後ろに回して、それを俺から遠ざけた。
「俺のもあるんだ。1個も2個も同じだろ」
まだ遠慮する睦に、
「いいから、ほら」
更に促してやると
「…ありがと」
それでもおずおずと差し出される。
もたもたしてると引っ込め兼ねない。
それを素早く奪って
自分のカップと重ねて持った。
こいつは同じ手にキャンバスも抱えているのだ。
持ちにくい上に
せっかくのキャンバスが汚れでもしたら
台無しだ。
…それも記念になっていいかもしれないけど。
パッと顔を上げると
見慣れた横顔。
人混みに紛れて、
今居なくてもいいのにと思うほど
タイミング悪く、
不死川が歩いていた。
その隣には
長い、黒髪の女。
特徴的な髪飾り。
ヤツの腕に自分の手を絡ませて
楽しそうに笑うと、
表情までは見えないが
斜め後ろから覗く頬のあたりが
間違いなく緩んでいて…
疑う余地もねぇ。
あいつマジで女いやがったのか…!
「どうしたの?」
睦に声をかけられハッとした。
「いや…!なんでもねぇ!」
こっちとあっちを結ぶ直線を塞ぐ位置に
身体を滑り込ませ
睦の視界を塞ぐ。
睦から直接聞いた事はねぇが
こいつはきっと不死川を想っているから…
俺の勘違いならいいが、
もし当たっていたら…と、
それを考えたら恐怖すら感じた。
見せたらダメだ。
本能的にそう思った。
なのに睦は
「なになにー?綺麗なお姉さんでもいたのー?」
俺の陰からひょこっと顔を出してしまい、
「見せてご覧なさいよ、宇髄くん好みの、…」
…あーあ。
見つけた。
そうなんだよ。
気になっているとか、好きだとか、
そういう感情を持ってるとな、
どこにいて、どんな状況にあっても、
見つけちまうモンなんだよ。