第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
ほんと、
今日の暑さは異常だ。
「どこ行くのよ?」
ポケットに手を突っ込んで
ずるずる歩きながら
睦の背中に呼びかける。
歩くたびに揺れる長いポニーテール。
短めのスカートの裾をひらめかせ
軽やかに歩く睦は
どう見てもご機嫌さんだ。
「わかんないけど」
「アテはねぇのかよ」
ちょっとずつ、
睦の事がわかっていく。
その過程が、くすぐったくて幸せで。
お前の事を、誰よりもわかっていたくて
1番そばにいたいのに、
いっぺんに知ってしまうのは
あまりにももったいない。
このもどかしいのが
俺の心をひどくくすぐるんだ。
なんて幸せな時間だろうな。
公園を出て
さっきの通りに戻った睦。
迷わず歩いている所を見るに、
目的地は決まっているのだろう。
進むにつれ、すれ違う人が増えていく。
そうしていつしか
繁華街へと紛れ込んでいた。
「おい睦。
お前迷子になってんじゃねぇだろうなぁ」
「おっかしいなぁ…。
あったんだよ?水槽があるとこ」
「水槽?」
「そう、小さな水族館みたいな…」
……
「さっき通り過ぎたよな?」
最近出来たショッピングセンターの中の
小さなアクアリウム。
俺が後ろを指さすと、
「えぇッ⁉︎言ってよ!」
「いや、俺どこ行くか知らねぇだろー」
「そっか。あー、戻る?」
人混みも手伝って、
うだるような暑さ。
睦はぐったりだ。
「睦が行きてぇなら行こうぜ。
涼しいんだろ?
このまま帰ったって結局暑ィんだから
どうせなら行こうぜ」
くるりと回れ右。
今度は俺が先頭。
睦が俺についてくる格好だ。
「うん…行く、」
ぐったりした睦は
引っ張ってってくれという事なのか、
Tシャツの上に羽織っただけの
制服の裾をぎゅっと掴んだ。
顔だけ振り向くと
ぱちっと目が合う。
「……シワになるわぁ」
「えぇ…助けてよ、」
もう歩けない、のニュアンスで
睦は俺に縋った。
やべー…
調子乗りそう。
あんなに自分を戒めたというのに。