第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
するときょとんとして、
ちょっと嬉しいような
照れているような、…
マイナスでなく、曖昧な表情を浮かべる。
あれ…
嬉しかったかな…
そんな顔されると
こっちも嬉しくなりそうだけど。
「…わかっ、た。じゃ、また明日…」
キャンバスを胸に抱え
スックと立ち上がる睦。
「え、もう?」
そんな事を言うつもりはなかった。
なのに、
…なんで、言ってしまったのか。
「えぇ…まだ?」
こちらを見下ろす困り顔は
ほんのり赤く染まっていて
こっちまで意識させられた。
「いや…、まだ、って事ねぇけど…
早ぇなって…」
なんで俺までこんな調子なんだか…。
睦は少し困ったふうだったが、
「だけど、明日なんでしょ。色塗るの…」
「まぁな」
それしかねぇ。
場所の確保も、画材の調達も
今はムリだ。
「…なら、帰っても…いいでしょ?」
そう言っているくせに、
その声はさ、引きとめてって
言ってるようにしか聞こえねぇよ。
顔を見せないように
少し向こうを向いているのが、嫌だ。
…
こっちを向け…
向いたら、引きとめてやるよ。
…なんて意地の悪いことを考えた。
自分こそ、
ここに残って欲しいくせに。
「そう、だな…。じゃ、明日…」
「うん。…またね、」
そう言って
遠慮がちに1歩踏み出す睦。
様子見、とバレバレな1歩だった。
自分を押し込める事に
慣れ切っている睦には
ハードルが高い…?
それとも、
俺をひとり置いていくのが
申し訳ない?
若しくは
1人で帰るのが心許ないとか?
…それはねぇな。
1歩、また1歩と、
放置されて伸び切った雑草を踏みしめ
睦が遠ざかっていく。
お互いに歩み寄った事に
気づかないフリをして…。
それを、どこか恥ずかしく思いながら。
こいつはきっと、
このまま振り返ったりしない。
そんな中途半端な事をするくらいなら
最初からしないだろう。
そういうヤツだ。
…それなら、
振り向かせなくちゃ。
取り逃してしまう前に…