第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
俺が貸した鉛筆が描き出した線は…
「お前…それ……」
俺が言葉を詰まらせると、
睦は
え?とこちらを振り返り首を傾げた。
俺が驚いたのは、
「それ…何描いてんだ…?」
あまりにも何を描いているかが
わからなかったからだ。
やべぇ、
絵の描き方っていうからてっきり、
絵の具の使い方とか手順とかだと思っていた。
もしかして、それ以前の問題か…?
ガキが行く絵画キョーシツじゃねぇんだ。
猫の描き方なんて教えるつもりねぇぞ…
「…どーいうイミ?」
「どーゆーもこーゆーも…
それなんなのよ?絵なの?線なの?」
「えぇ⁉︎そんなに絵に見えないの⁉︎」
睦は飛び上がって驚き、
キャンバスを両手で持ち直して
改めて眺めた。
それに倣って、俺も身を起こし
同じくキャンバスを覗き込む。
睦が描いた
ヘロヘロのふにゃふにゃな線を目で辿り
自分なりに形を追っていくが……
「あ、…抽象画?」
「…違う。抽象画ってなに」
ちょっと不機嫌そうな睦。
解せないような目が俺を凝視めた。
抽象画じゃない!
という事は…
何かを描いた、…って事で…
でもどう見たって、あの線が
何かを象っているようには見えないのだ。
待てよ、四角と、…
あのもこもこは何だ…?
右に左に頭を傾け
どの向きで見ればしっくりくるのかを見定める。
しかし……わからない!
「あ、わかった。なんかふわふわしたやつだ。
ね?何描いてるかわからないやつでしょ、
抽象画」
「えー…?」
睦の絵の謎を解き明かすのに忙しい俺は
こいつが言ってる事なんか上の空。
「何描いてるかわかんないやつ!」
すると睦はキャンバスを胸に抱え
描いたものを隠すと、俺に詰め寄った。
「なんだよ、
何描いてるかわかんないやつって?
お前の絵の方がよっぽどわかんねぇけど」
「ひどー!
絵の先生とは思えない発言だよね!」