第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
嬉しいのと同時に可笑しくなってきて、
「ふふ…ありがと、」
つい笑ってしまう。
涙なんか、どこかへ行ってしまった。
私は誰かと接するのを
極端にさけてきた。
だけどそれが可笑しく思えて来たんだ。
臆病になりすぎていた。
世の中、悪い人ばっかりでもないってこと。
今まで、嫌な人をさけているつもりでいたけれど
いい人まで、さけていたんだな…
「ん?…どうした?
なんか可笑しかったか………」
尻窄みになっていく彼の声…
ん?と思い振り向くと
私の手元を凝視めて固まっていた。
こっちの台詞ですけど…
『なんかおかしいか』って
そのままお返しします…
「お前…それ……」
え?
『それ』、って……
絵のこと?
数学を笑うヤツは数学に泣くぞ
この間不死川が言った、
そんな言葉を思い出した。
アレは、サボった俺に言ったようでいて、
実は睦の事を言っていたんだ。
…そうだよな?
今ならわかる。
睦は、…装ってはいたが
100か、0か、
そうやって何事も割り切ろうとしていた。
曖昧な事は解決させたくて、
間違いがないように分析をして…
本当の自分を押さえ込み、
変わり者だと思われようが
そこまでして貫いていたのだ。
そうやって
自分の気持ちを計っていた睦には
こっちも推し計らなければならないと、
不死川は暗に言っていたのだ。
お前の手に負えんのかって、
そう言われていたのかもしれない。
…上等だよ。
俺は、不死川を超えたいんだ。
連れてきた裏庭のベンチで、
睦に、これまで起こったあれこれを
割と詳しく聞いていた。
誰かから話しかけられれば
柔らかな対応の出来る睦。
でも、自分からは決して話しかけない理由。
その話も佳境を迎えた頃…
急に笑い出した睦。
ベンチの背もたれに頭を預けていた俺は
ハッとしてそこをもたげた。
すると目に入ったのは
睦が下書きと称して描いていた絵だ。