第44章 .☆.｡.:.夏色.。.:*・°☆.

睦は不思議そうに
小首を傾げた。

「そう、俺は？
友達になってくんねぇの？」

「…そんなのわかんない、」

「わかんないって事ねぇだろ。
俺の事が嫌かって言ってんの」

ふざけたように言ってるけど
コレ断られたら立ち直れねぇヤツだ…

本格的な夕暮れ。
裏道に入った俺たち以外、
ここを通る人はいない。

緩く吹き付ける風は
さっきよりはいくらか涼しい気がした。

それは、俺が緊張してるからかな…

「嫌、だった。ずっと怖い顔してくるの。
席遠いのに、突き刺さるの、目線が」

「だからその事は悪かったって」

「じゃなんであんなに睨んでたの？」

「えー、お前またそんなこと……」

お前が不死川とばっか仲良くしてたからー…
なんて言えると思うかよ！

「睨んでたんじゃねぇんだって。んー…」

「…話せない？」

「いや、そうでもねぇけど…」

聞いたら引くだろうなぁ…

「私以外の人にはニコニコ楽しそうなのに
どうしてかなって思ってた。
だけど私だって、
みんなにいい顔なんかできないし、
…話せないならいいけど、
ほんとに私の事が嫌いなわけじゃないの？
同情してるなら、そんなのいらないよ」

「同情で友達になろうとしてると思ってんの？
何で俺が
そんなめんどくせぇ事しなきゃならねぇんだよ。
俺さっきお前のこと好きだって
言ったつもりだったけど」

「…聞いたけどさ」

「ならいいだろ」

言わずに済む。
このまま行けば。
ただのやきもちだった事を…。
都合のいい事に
睦は俺の『好き』を
色恋のソレじゃねぇと勘違いしてるし。

情けねぇな俺。

「いいけど」

「ならもうそれについて訊くなよ。
睨んでねぇから。
そう見えたかもしれねぇが
お前を嫌いでそうしたワケじゃねぇんだ」

「…うん。わかった、」

「で？」

「………」

さっきの答えを促すと
困ったように眉を寄せ、

「何にもいい事ないと思うよ」

「なに？」

「私と友達になっても
何にもいい事ないって言ったの。
何の得もないよ」

「損得で友達なんかなるか。
お前いろいろ変わってんなぁ…」

別にいいけど。
友達宣言なんかしなくたって
この流れに沿って
もう勝手にそうなっていくだろうから。