第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
「何で『ずるい』んだよ」
そのひと言が気に食わなかった。
なんとなく、
睦本人であろうと、
こいつの事を悪く言われるのが嫌だった…
「だって、
こんなのを病気ってことにしちゃってさ。
心も体も、ほんとに大変な人がいるでしょ。
そんな人に失礼だよ。
私なんか、ただフラフラしてるだけだって
きっとみんな思ってる。なのに、
あの子は病気だから好きにさせてやって下さい
なんて、親は平気で先生に言うんだよ。
先生もめんどくさいんだろうね、
私には何も言わない…」
思っていたよりも
ずっと重たい答えが返ってきた。
睦はきっと、淋しいんだろうな。
そんな思いが伝わってくるような話だった。
「お前を守る為に言ってるんだろ?」
そうであって欲しいと思った俺の気持ち。
「世間体を気にしてるだけだよ」
それを打ち砕く睦の言葉。
「みっともない私を、心の病気って事にして
体裁を保ってるの」
「だけど実際、教室にいたら
息ができなくなるんだろ?ならそれは、
そういう位置付けができるんじゃねぇの?
いや、俺だって別に
お前を病気って事にしたいワケじゃねぇぞ。
ただずるくはねぇだろってコトだ」
「……」
睦は足を止め、
俺より1歩下がった。
「…悪ィ。勝手に色々…」
それにつられて俺も立ち止まる。
「…今の話、だれにも言わないでね。
これ知ってるの、不死川くんしかいないの」
「……なぁんでぇ?」
一気に血圧上がった。
そんな名前、
まさか今聞くハメになるとは
思いもしなかった!
思っっ切り油断してた!
珍しくすっげぇ真面目な気分になってたのに
なんだ、この損したみてぇな感じ。
「なんで、って何?」
いやいや、そうだよな。
今こいつは俺に話したんだ。
2人だけの秘密(?)を俺にも共有した。
俺は介入する事ができたのだから。
…介入?じゃねぇか。
「いや、なんで不死川かと思っただけだ。
気にすんな」
解決したから。
「だって、私の友達、不死川くんだけだもん」
…友達ねぇ…。
「俺は?」
「俺?」